文化

村上隆 8年ぶり国内大規模個展 京都市京セラ美術館 9月まで

2024.03.16

村上隆 8年ぶり国内大規模個展 京都市京セラ美術館 9月まで

「村上隆 もののけ 京都」 展示風景、京都市京セラ美術館 2024年 Photo: KOZO TAKAYAMA ©2024 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

2月3日から京都市京セラ美術館(左京区)で、『京都市美術館開館90周年記念展 村上隆 もののけ 京都』が開催されている。村上は1962年に東京で生まれ、1993年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。現代美術の第一線で活躍し、欧米中心のアートシーンに刺激を与えている。本展示は、京都市美術館開館90周年を記念して企画された。主に海外で活躍する村上にとって国内で約8年ぶり、東京以外では初めての大規模な個展となる。

会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、全長およそ13メートル『洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip』だ。江戸時代に岩佐又兵衛が描いた『洛中洛外図屏風(舟木本)』をAIで読み取り、村上が描き直した。神社仏閣をめぐる人、歌舞伎や浄瑠璃に興じる人など、京都で暮らす人々を生き生きと描く。京都の町を彩る金箔の雲に無数のガイコツを描くことで、京都の町は表層的にはきらびやかだが、根底には「もののけ」が多く存在することを表している。

また第4章では、『風神図』『雷神図』が展示されている。『風神雷神図』は江戸時代から多くの絵師たちが取り組んできたモチーフで、俵屋宗達や尾形光琳の作品が有名だ。17世紀の絵師によって描かれた風神・雷神の姿には、勝利への意志が満ちあふれている。一方で、村上が描いた風神雷神の表情は柔らかく、丸みを帯びたフォルムが愛らしい。そこには、現代日本の「ゆるさ」が反映されている。

村上は、アニメやマンガに代表される日本のポップカルチャーにも造詣が深い。村上が手掛けるアニメーションのキャラクターの作品や、最新の技術を使って制作した立体アートも展示されている。

第5章でひと際目を惹かれたのは、正方形の絵108枚が壁一面に並べられた『Murakami. Flowers Collectible Trading Card 2023』だ。規則正しく並べられた色とりどりのキャンバスには、表情豊かな「お花ちゃん」が描かれている。芸術作品そのものの評価ではなく希少性で価値が判断されるようになったと考える村上は、希少性の高いものは高価で取引されることのあるトレーディングカードを模してこの作品を制作した。

最後の第6章では、舞妓や五山の送り火、歌舞伎など京都にちなんだ作品が並ぶ。村上は美大生の時に京都を訪れ、そこで出会った芸術作品に刺激を受けた。本展示では、村上が京都で育まれてきた文化を吸収し、独自の視点から生み出した新しい作品を楽しむことができる。

展示作品には制作進行中のものが含まれており、会期終了までに完成を目指すという。9月1日の閉幕まで会場に何度も足を運んで、完成までの過程を味わうのも良いだろう。開館時間は10時から18時までで、料金は一般2200円、大学生1500円。なお、京都市在住もしくは京都市内の学校に通う学生は無料。(史)

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