文化

珠玉の蝶700頭を展示 「蝶に会える日」展

2023.12.16

珠玉の蝶700頭を展示 「蝶に会える日」展

カザリシロチョウの仲間(左)とカラスアゲハの仲間(右)

京都大学総合博物館は11月29日から、企画展「蝶に会える日―村田泰隆コレクション展―」の第2弾「東南アジアが育んだ多様性」を開催している。本展示は、実業家で蝶の蒐集家としても知られる故・村田泰隆氏のコレクションを展示している。寄贈された標本は1万7千点を超え、昨年度から、その一部を展示するシリーズ展示が始まった。

本展は、「カラスアゲハ亜属とカザリシロチョウ属の多様性」、「警告色や擬態の不思議」、そして「希少種と環境保護」などいくつかのコーナーを設け、1室のなかで約700個体を展示している。そこには、ワシントン条約で保護されているルソン・ミンドロカラスアゲハのほか、世界最大級の蝶であるアレクサンドラトリバネアゲハも含まれている。

展示品のうち特に目を引くのは、黒地に青・緑の光沢ある模様が美しいカラスアゲハ亜属だ。本展ではインドから中国、そしてパプアニューギニアにかけて採集された十数種を紹介している。標本のそばには、解説とともに系統樹と産地が記されている。実物と照らして観察すると面白いだろう。カラスアゲハ亜属の羽の模様にはいくつかのパターンがあり、前と後ろの羽根にわたる青のストライプを持つものや、前翅には模様がないが後翅に青い斑紋を持つものなどがいる。分類上近しいものであれば似た模様を持つと思いきや、似た模様を持っているのに分類上遠い種がいることがわかった。一旦分化したあと、並行して進化し、収斂したと考えられる。一方、ミヤマカラアゲハのように、産地による種内変異が大きいものもある。特に北海道のような寒冷地の個体は、体は小さくなるがメタリックな水色やエメラルドグリーンの斑紋が強く現れ、特に美しいとされる。

この展示は、京大蝶類研究会のOBなどの協力もあり、緻密な分類と個体ごとの産地の明記など、学術的にも遜色ない内容である。はじめは、種間の細かな違いがわからず、深く理解できないと心配になるかもしれない。この点について、展示を担当した伊藤毅助教は、「まずは美しさそのものを感じて、それから長い進化の歴史や、環境保全について思いを馳せてもらいたい」と語る。一番好きな蝶の名前を覚えたり、蝶の住む国々の環境について調べたりして、この深い世界に入るきっかけをつかんでみてはいかがだろうか。

会期は12月24日まで。月・火曜日休館。観覧料は一般400円、大学生300円(京都府下の大学の学生は無料)、高校生以下無料。(唐)

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