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篠原教授ら、精子幹細胞からノックアウトマウス作成

2006.05.01

京都大学大学院医学研究科の篠原美都助手・篠原隆司教授らの研究チームがマウスの精巣から採取した精子幹細胞を用いて、特定の遺伝子が破壊されたノックアウトマウスの作成を成功させた。

今回の研究は、意図的に遺伝子を改変させる方法である遺伝子標的組換えを用い、精子幹細胞のオクルジン遺伝子を破壊することに成功したもの。これまで、 遺伝子標的組換えは胚性期由来の幹細胞である、胚性幹細胞(ES細胞)に限られていたが、今回の研究で胚幹細胞以外の組織幹細胞でも遺伝子標的組換えがで きることが分かった。
篠原教授らは新生児マウスの精巣から取り出した精子幹細胞のオクルジン遺伝子を破壊した。そしてその幹細胞を再度精巣に戻し、雌と交配させて生まれた個 体同士をさらに交配させた結果、孫の世代でオクルジン遺伝子が欠損した個体が生まれた。尚、オクルジン遺伝子は細胞同士の接着に関係する遺伝子で、この遺 伝子が欠損した個体は慢性胃炎になる。  精子幹細胞など組織の幹細胞は非常に数が少なく、従って実験体を得るのが非常に困難であった。しかし、二〇〇三年に篠原教授らのグループは精子幹細胞の 長期培養方法の開発に成功しており、培養による大量の実験体の確保が今回の研究を可能にした。  組織幹細胞においても、ウイルスによるランダムな遺伝子導入はこれまでも行なわれてきた。しかし、この方法では標的である遺伝子を改変できる確率が低 く、またこの方法を用いたマウスが癌になるケースが多かったため、遺伝子標的組換えの導入が望まれていた。
組織幹細胞、特に精子幹細胞の遺伝子標的組換えが可能になったことで、新規のノックアウト動物の作成が可能になった。これまで胚性幹細胞の遺伝子標的組 換えは可能であったが、マウス以外の胚性幹細胞は生殖細胞になる能力が無いため、マウス以外のノックアウト動物の作成は難しかった。しかし、多くの動物の 精子幹細胞は似たような性質を持っている為、今回の研究と同様の手法を用いて、マウス以外でもノックアウト動物の作成ができると期待される。
篠原教授らは、今後はラットで同様の実験をしていきたいと語った。尚、この研究成果は米国科学誌「PNAS」の四月二十四日の週の電子版に掲載されている。

幹細胞…血液や精巣などの組織に存在する、無限に増殖する能力を備えた細胞。各組織の維持に重要な役割を果たす。その強い再生力の為、再生医療の中心となっている。

篠原教授ら、精子幹細胞からノックアウトマウス作成 培養される精子幹細胞の様子

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