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ひもの巻き付き 仕組み解明 巻き付きの状態図 作成に成功

2024.02.16

ひもの巻き付き 仕組み解明 巻き付きの状態図 作成に成功

モデル実験の様子。弾性ひもの一端を円柱に固定し、円柱をゆっくりと回すことで、ひもを巻き取る。(報道資料より)

理学研究科の谷茉莉助教、立命館大学理工学部の和田浩史教授らの研究グループは2月5日、ひもが棒に巻き付く仕組みを明らかにした。ひもが巻き付く形状と間隔は、ひもの硬さ・太さ・長さと、巻き付く棒の太さに依存するという。材料力学やロボット開発などの分野への応用が期待される。

朝顔のつるや水撒きホースなど、身の回りには多くの「巻き付き」を見ることができる。ひも状の物体は、同じ素材でできたブロック状の物体に比べて、たわみやしなやかな変形が起こりやすい。しかし、ものの巻き付きには、力をかけると変形する「弾性体」と幾何学上の変化などが絡み合っており、その複雑さから不明確な事項も多かった。これらの理論は、柔らかいアームを持つロボット開発や構造物の設計などへの応用が可能と見られ、近年、注目を集めている。

日常生活で人間は、スパゲッティをうまくフォークに絡めたり、糸を芯に巻いて収納したり、経験則に基づいて最適な巻き付け方を実践している。しかし、巻き付ける物体の形状によって、巻き付けるのが難しい場合や、綺麗に巻き付かない場合も存在する。特に、外力をかけずに、ひもの自重のみでぶら下がっている状況で、巻き付きの可否やその間隔がどのように決まるのかは解明されていなかった。

研究グループは、物理実験、数値シミュレーション、解析的理論を組み合わせて、巻き付きの形状とその仕組みを明らかにした。

グループは硬さや太さが異なる弾性体の均一なひもを作成。ひもの一端を、水平に置かれた円柱に固定して、ひもを重力で下に垂れ下がった状態においた。この状態で円柱をゆっくりと回すことで、ひもが▼隙間なく密に巻き付く▼間隔を開けてらせん状に巻き付く▼巻き付かない、3つの場合があることを確かめた。途中から巻き付きパターンが変化する場合も存在したという。グループは、ひもと円柱の摩擦などを考慮したモデル計算によってこれらの現象を再現した。

これらをもとにグループは、円柱の太さと、ひもが円柱からぶら下がっている長さ・ひもの硬さや太さ・重さを反映した「重力曲げ長さ」によって巻き付きパターンが変化することを明らかにした。「重力曲げ長さ」とは弾性体のひもに対して、ぶら下がる重力と曲げの効果が同程度になる長さを指し、この長さよりもひもが長い場合、重力の影響でひもは曲がるようになる。また、巻き付きパターンの境界や巻き付き間隔についても理論的に説明できたという。

谷助教は今回の研究について、「自身の手元でひもを弄って試すことが可能なので、色々な方々にこのような問題を身近に感じていただけるきっかけとなれば嬉しい」とコメントした。

研究成果は、2月2日に国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載された。

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