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市販薬乱用 心理を研究 「知恵袋」の質問分析で

2023.12.16

市販薬乱用 心理を研究 「知恵袋」の質問分析で

市販薬乱用者の心理と行動(京大提供)

中山健夫・京大医学研究科教授、刈谷梓・同博士課程学生らのグループは、Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に寄せられた質問データを分析し、市販薬乱用者の心理や実態を調査した結果を発表した。

昨今、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ、OD)によって覚せい剤と同様の効果を得ようとする若者の存在に社会的関心が集まっている。しかし、研究グループによると、国内において、専門機関を受診していない潜在的な乱用者を対象とした研究は行われてこなかった。そこで、本研究は、Q&Aサイト上で薬物に関する様々な情報が交換されている点に目を付け、「Yahoo!知恵袋」に投稿された約500件の質問を分析し、市販薬乱用の実態を探った。質問の検索には、特定の医薬品名と「オーバードーズ」「OD」といったキーワードを組み合わせた語句を用いた。

その結果、まず、市販薬乱用者がオーバードーズに関する質問を投稿していること、投稿件数が近年増加していることが明らかになった。市販薬を乱用し又は乱用しようとしている一定の人たちが、匿名で投稿できる媒体として「Yahoo!知恵袋」などのサービスを認知、利用していると考えられるという。

また、市販薬乱用者の心理と行動の関係性が垣間見えた。オーバードーズ(OD)の存在を知り、興味を持った人たちは、ODで得られる効果や方法、ODが身体に及ぼす影響への懸念を質問し、不安より期待が上回った段階でODする。ODを経験した人たちは、より効果を得られる方法や、ODによって実際に自分の身に起きた苦痛について質問する。期待が上回り、ODに依存した段階にある人たちは、さらにODするうえでの期待や不安について質問する。期待よりも不安が上回った段階では、ODをやめるためにどうすれば良いのかを質問する、といった流れが見えてきたという。

研究グループは、市販薬乱用に関する信頼できる情報を作成し、普及させることが必要であり、薬局やドラッグストアからのサポートも不可欠だとまとめ、「市販薬を乱用している人々が抱える不安を把握し、適切なサポートを提供することが必要」だとコメントした。

本研究成果は、11月22日、国際学術誌「JMIR Formative Research」にオンライン掲載された。

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