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DNA折り紙 安定化に成功 結合の切れ目 効率的に連結

2023.11.16

DNA鎖を自在に折りたたむことで、まるで「折り紙」のように様々な構造を作り出す「DNA折り紙」技術。髪の毛の直径の10万分の1のサイズで様々な構造体をつくることができる。

京都大学エネルギー理工学研究所のKirankumar Krishnamurthy研究員らのグループは11月2日、酵素反応や化学反応を用いてDNA同士の結合を強固にし、DNA折り紙の安定性を向上させることに成功したと発表した。今後、新たなナノテクノロジーの開発に寄与することが期待される。

DNA折り紙は、DNAの塩基配列を接合部として、平面・立体の構造物を形作る技術。特定の機能を付与することが可能で、体内への薬物の送達、ウイルスの抑制などへの応用が期待される。一方、構造が不安定で設計通りの機能を発揮しにくい課題がある。これまで、別の材料でDNAの結合部を覆い構造を安定させる方法が存在したが、DNA折り紙本来の性質を失ってしまうデメリットがあった。

グループは、アクリル繊維の紡糸液などに使われる溶媒・ジメチルスルホキシド中での酵素反応や、タンパク質の分解に用いられる化合物・臭化シアンを用いた化学反応を活用。これによって、DNA折り紙にある数百もの隙間や切れ目を効率的につなぐことに成功した。特に立体構造の折り紙には前者の方法が有効で、高温下などDNA折り紙が苦手とする環境でも安定性が向上したという。

DNA折り紙はその不安定さから応用可能性が大きく妨げられてきた。この技術を応用することで、医学、薬学、生物学など多彩な分野での技術革新が期待される。

研究成果は、2023年9月21日に、国際学術誌「Small Methods」にオンライン掲載された。

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