企画

ウクライナ留学生 侵攻から1年半 現在地を探る 〈前編〉続く京大の支援

2023.12.01

ロシアによる軍事侵攻が始まって1年半以上経過した。現在も戦闘が続く中、母国を離れて勉強を続けるウクライナ学生が京大にいる。当企画では学生の声に耳を傾けつつ、支援の実態や戦争の影響に迫っていく。前編となる今号では、京大が行ってきた支援を振り返る。(郷・省)

「最大限の便宜を図る」
2022・3~2023・3


京大はまず2022年3月に声明を出し、ウクライナ情勢の「平和的な解決を強く望む」としつつ「学生の受け入れ等最大限の便宜を図る」と表明した。4月には、13、14年に学術交流協定を結んだキーウ⼯科⼤学とタラス・シェフチェンコ記念キーウ国⽴⼤学からの学生受け入れを発表。授業料免除等の特別措置を施し、1年間の想定で受け入れるとした。なお、必要に応じて学修期間の延長を可能とした。また、奨学金支給に活用する目的で「ウクライナ危機支援基金」を立ち上げ、寄付の募集を開始した。更に同月、株式会社・学生情報センターはウクライナ学生に1年間無償で住居を提供すると申し出た。6月に最初の留学生が到着して以降、学生の受け入れが進み、22年度は、渡日せずにオンラインで履修した3名を含む合計18名を特別聴講学生として受け入れた。18名のうち学部生17名は、国際高等教育院が提供するE2科目や日本語講義を履修した。

事務部門としては、国際交流課が協定校との交渉やセレモニーを、渉外課が基金を担当する。留学生支援課は受け入れが確定した学生の渡日支援や学生情報センターとの協定書締結、奨学金支給などの経済的支援を行うとともに、国際教育交流課等と連携し、ウクライナ留学生への対応にあたる。この対応は、22年度の監査報告の中で「きめ細かく実施した」と評価された。また、対応の一環として、留学生ラウンジ「きずな」にウクライナ人スタッフを配置。ウクライナ留学生が気軽に相談できる環境の整備に務めた。

22年10月には、百周年時計台記念館でウクライナ学生歓迎セレモニーが実施され、ウクライナ学生14名が参加した。湊総長らは留学生受け入れには多くの支援が必要だったと振り返りつつ、サポートに全力を尽くすと発言。学生代表が「戦後も、ウクライナと日本の友情の絆が、このように緊密であり続けることを願う」と述べると、会場は拍手に包まれた。

「サポートを続けていく」
2023・4~現在


22年3月に京大が提示した学修期限1年を延長する形で、授業料免除・住居無償提供といった支援は現在も継続している。今年10月には新たに5名のウクライナ学生を受け入れた。これを受け、11月には再び歓迎会を実施。京大で学修するウクライナ学生17名全員が参加した。

また「ウクライナ危機支援基金」には10月末日時点で延べ2290件、総額約1億2300万円の寄附が寄せられた。この基金を元に、ウクライナ学生には日本への渡航費用や生活費支援を目的とした奨学金が毎月8万円支給されている。

基金や京都府・京都市・民間会社からの支援を踏まえ、京大はウェブサイト上で、現在受け入れた学生が「安心して生活できる環境を整えることができている」と声明を出した。更なる支援について「予定していない」としながらも、今後のウクライナ情勢を鑑み「サポートを続けていく」としている。

ウクライナ情勢の経過

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