インタビュー

〈京大知伝〉人馬を一つに 全国への障害 飛越する 経済学部3年 柴崎秀悟さん

2023.12.01

〈京大知伝〉人馬を一つに 全国への障害 飛越する 経済学部3年 柴崎秀悟さん

柴崎さんと愛馬のノブ。馬名は「パシフィア」だが競走馬時代の馬名「マサノブルース」から愛称をつけた(=北部構内 馬場)

「パカッパカッパカッ」小気味良い足音と、馬のいななきだけが響く早朝の北部構内。人馬一体となって練習に励む京大馬術部を、主将として率いる。「競技で勝つ以前に、きれいに、上手に馬を操る先輩の姿に憧れた」。未経験ながらに馬術部の門を叩いた。

馬術競技には、コース上の障害物を飛越する障害競技、フィギュアスケートのようにステップなどを踏み、その美しさを競う馬場馬術のほか、これらに加えて、森の中を駆け回るクロスカントリーを行う総合馬術の3種類が存在する。なかでも、「どうせやるなら『花形』を」と総合馬術を選んだ。

「バディ」となる馬の多くは元競走馬。一見、調教は済んでいるようにも思えるが、飛んだり駆け足をしたりといった馬術に使う細かい動きは難しい。できたら褒めて、だめなら叱る。単純にも見えるが、扱うのは生き物。「馬それぞれ異なる性格なのはもちろん、同じ馬でもその日のコンディションを見極める必要がある。ここが難しいが面白さでもある」と笑みをこぼす。

人間が馬に基本動作を教えることはもちろん、初心者の場合には、ある程度調教が済んだ馬に乗ることで逆に正しい動作を教えられることもある。特に、賢い馬や経験豊富な馬だと、人間の指示を補って勝手に飛んだり、指示内容を察して動いたりすることもあるのだ。「部員と馬が一緒に成長していく。そこが一番の魅力」。

通常、毎年1頭の馬を担当する事が多い馬術部だが、自身はこれまで3頭の馬に携わってきた。1頭の馬に乗り続けると、その馬の特徴を掴んだ乗り方が可能な反面、馬のクセを反映した乗り方になってしまう側面もある。多くの馬を経験し、引き出しを増やせた点で「良い経験だった」と振り返った。

印象的な出来事に今夏の七帝戦を挙げる。七帝戦の会場である東大から馬を借りて競う、「貸与馬」のシステムが印象的だった。通常の競技では普段からともに練習し、クセや強みを知り尽くした人馬で戦う。競技直前に馬と対面しすぐに本番という形式に「全く別の競技」と驚いた。「経験だけではなく、普段からどれほどたくさんの馬に乗ってきたか、対応力、引き出しが問われる」。経験者に混じって大舞台を経験できたことも大きな刺激だった。

愛馬「ノブ」とともに目指すのは来年の全日本学生選手権大会。一方で、部長として団体での大会出場も目標に掲げる。1人馬でも高度な調整が要求される中、3人の乗り手と馬3頭以上での出場が必要となる団体は難易度が高く、緻密な訓練が必要だ。「自分もチームも大切にしつつ、後の世代になにか残せたら」。Adlai E. Stevenson High School出身。(爽)

パシフィアの馬体重は約550㌔ほど。JRAでの競走馬時代には京都ジャンプ(J・G3)を制した

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