インタビュー

〈京大知伝〉「楽しさ」胸にリンクを滑走 工学部情報学科2年 塩見陸さん

2023.10.16

〈京大知伝〉「楽しさ」胸にリンクを滑走 工学部情報学科2年 塩見陸さん

シットスピンに挑む塩見さん。滑った後には首を傾げることもあった

音楽にのせて氷の上を滑り、ジャンプやスピンといった技術を競うフィギュアスケート。滑走の技術であるスケーティング、プログラムの構成、表現力を評価する。「走るより少ない労力でスピードを出せ、後ろを向いて滑れる」。非日常的な爽快感に惹かれた。

フィギュアスケートとの出会いは小学生の頃。近所に冬の間だけ設置されるスケートリンクで友達と遊んだ。大学で何をしようか考える中、フィギュアスケートの楽しさを思い出した。新歓で先輩のスピンを見て「何でこんなにクルクル回れんの」と驚き、入部を決めた。

リンクを滑走していると、筋肉量で勝るはずの小学生に追い抜かされることもある。上級者は上手に「氷を押し」、少ない歩数・力感で速いスピードを出す。胸の反り方も綺麗だ。奥深さゆえに「永遠に到達出来ないかもしれない」が、そうした姿を目標に練習を積み重ねてきた。

「頑張りだけは一番でありたいです」。入部早々スピンの壁にぶつかった。先輩に教えを乞い、必死の練習を重ねた。かなり辛かったが、習得した時の達成感はその分大きかった。「成功体験があるからこそ、今は難しい技にも諦めずに挑める」。最近では、初心者には習得が困難とされるアクセルジャンプを身に付けた。卒業までに、上体を地面と平行にしてT字で回るキャメルスピンや、空中で2回転半するダブルジャンプの習得を目指す。

取材時は曲をかけて実際に演技する「曲かけ」の日だった。憧れの羽生結弦さんのように、「柔らかく厳かで綺麗な」クラシックに合わせて何度も滑走を重ねる。接地していない片足をまっすぐ伸ばし、指先の反りを意識して、表現力の向上を志す。加えて、動きのスムーズさや美しさ、何よりフィギュアスケートの楽しさが観客に伝わるプログラムを目指す。「やっぱり重要なのは楽しさです」。

フィギュアスケート部には「弟子制度」がある。新入生が上回生の中から、自分を指導し、自分のプログラムを作る師匠を選ぶ制度だ。既に弟子を1人持つ塩見さん。全身を使うフィギュアスケートでは、1つの動作で何箇所も意識する必要があるため、単に動きを見せるだけでは上手く伝わらないこともある。「ひとつひとつ言語化して、分かりやすく伝えることに苦労します」。

12月からは主将として43人の部員を率いる。「後輩にフィギュアスケートを真剣に楽しむ姿を見せて、その楽しさを伝えたい」。高津高校出身。(郷)

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