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琉球遺骨 原告上告せず 「歴史的な判決」確定させるため

2023.10.16

京大が保管する琉球民族の遺骨の返還を求める訴訟の原告らは10月10日、上告しないと発表した。「歴史的な判決」を確定させるためだという。大阪高裁(大島眞一裁判長)は先月、訴えを退ける判決を言い渡し、原告らは上告を検討していた。

弁護団は声明のなかで、高裁判決が地裁と「同様の論理と理由」で訴えを退けたことは「大変残念」としつつ、「沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する控訴人ら」と認定したことには「大いに意義がある」と指摘した。今回の訴訟には、琉球民族を先住民族と評価することで向けられる差別やヘイトスピーチに対峙し、理解増進のための議論の端緒にする目的があったと明かしたうえで、「一定の目的を達し得た」と評価した。

また、判決が「遺骨は、ふるさとで静かに眠る権利があると信じる」「持ち出された先住民の遺骨は、ふるさとに帰すべきである」と付言したことに、訴えを「真摯に受け取ろうという姿勢と『訴訟』という枠組みの限界との間の悩み」を感じ取ったと明かした。付言が、遺骨持ち出しから100年の節目を迎えることに言及し、協議に向けて「一定の方向付けを示した」点には「積極的な意味」を見出した。

原告らは、大島裁判長が遺骨を人骨と呼ばず、京大総合博物館での現場検証を「何度も求め」、傍聴席からの問いかけにも「真摯に答えた」と控訴審を振り返り、「大島裁判長の人間としての心情が判決文の付言として示されたと考える」と発表した。最高裁では「政治的な介入が予想され」、「歴史的な文言も消される恐れがある」として、「歴史的な判決」を確定させるために「積極的に上告しない」判断に至ったと説明した。

約5年にわたる裁判は終わりを迎えたが、遺骨の返還に向けた運動は今後も続く。原告の松島氏は来月京大に赴き、高裁判決を踏まえて遺骨の返還を交渉する予定だという。

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