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琉球遺骨 控訴審判決へ 原告「やるべきことは全てやった」

2023.09.16

京大が保管する琉球民族の遺骨の返還を求め、王族の子孫らが起こした訴訟を巡り、8月23日、控訴審第5回弁論が大阪高裁で開かれ、結審した。判決は9月22日に言い渡される。原告の金城氏は報告集会で「やるべきことは全てやった」とこれまでの裁判を振り返った。

前回の弁論に先立ち京大は、原告や裁判所の求めに応じる形で、保管箱の中に収められた遺骨の写真を初めて提出した。原告側は「遺骨の写真を見て原告がどう感じたかがポイント」だと考えており(報告集会での原告側弁護士の話)、原告の松島泰勝氏が法廷で意見を陳述した。

松島氏はまず、京大が提出した写真に供物が見当たらない点に言及した。アイヌ民族の遺骨を保管する北海道大学のアイヌ納骨堂には祭祀場が隣接し、祭祀が挙行されているとして、京大は遺骨を「敬意をもって扱っていない」と批判した。また、写真を凝視すると、いくつかの遺骨に直接標本番号が書き込まれているのが分かるとして、京大の研究者は「先祖の尊厳を毀損している」と述べた。さらに、厨子甕(骨壺)の中で遺骨を身体の構造どおりに並べたり、夫婦・親子の遺骨を一緒に厨子甕に収めたりすることで、ニライ・カナイ(あの世)における生活を準備するという信仰・慣習を紹介し、京大が遺骨に対して敬意を払わず、「研究対象の単なるモノに貶めている」ことが「写真からも明らか」だと述べて、「人として侮辱され、傷つき、強い怒りを覚えた」と京大を非難した。

また、原告側の弁護士が、弁論に先立ち提出した、これまでの主張をまとめた50ページ以上の書面の要旨を陳述した。

弁論後に行われた原告側の報告集会では、支援者らが控訴審を振り返った。原告の玉城毅氏は、京都地裁の判決に「非常にがっくりした」が、控訴審の裁判長は「こちらの考え方を十分に聞くという態度」だったので、「希望が湧いた」と語った。原告の金城實氏は、「この裁判の結果がどうであろうと、やるべきことは全てやった」としつつ、「裁判所において原告と被告が堂々と議論することがなかったのが残念」と述べた。

◆訴訟のあらまし

京都帝国大学の研究者が1929年に沖縄県今帰仁村の百按司墓から持ち出したとされる遺骨の返還を求める訴訟。2018年12月提訴。原告4名は、国際人権法又は憲法に基づき遺骨返還請求権を有するとともに、民法上も遺骨の所有権を有するとして、京大に対し遺骨の引渡しを請求するとともに、京大が遺骨の占有を続けることや、原告による遺骨の実見を拒否したことが不法行為を構成するなどとして、1人あたり約10万円の損害賠償を請求している。

京都地裁は22年4月に請求を棄却する判決を言い渡し、原告が控訴。同年9月に大阪高裁で控訴審第1回弁論が開かれ、同年12月、23年2月、7月、今回の計5回口頭弁論が行われた。

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