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京大 遺骨の写真提出 8月結審へ 控訴審第4回

2023.07.16

京大が保有する琉球民族の遺骨の返還を求め、王族の子孫らが起こした訴訟を巡り、7月5日、控訴審第4回弁論が大阪高裁で開かれた。また、これに先立ち、京大が遺骨の写真を初めて提出したことがわかった。控訴審は次回8月23日の弁論で結審する。

京大が新たに提出した写真は、保管箱のなかに収められた遺骨を低い角度と高い角度からそれぞれ一枚ずつ、計26体分撮影したもの。保管箱には遺骨の収集場所などを記したラベルが貼られている。

写真を見た原告側は、遺骨の保管状況を改めて批判した。原告の金城實氏は今回の弁論で、琉球の死生観や葬送文化について語り、琉球の骨壺(テーダ)と比べると、京大が遺骨を「段ボール」に入れているのは「とんでもない」と陳述した。また、原告の松島泰勝氏は、遺骨が「整然と分類」されているのは「遺族からしたら侮辱」であり、特に「頭蓋骨が逆さまになっているのはあり得ない」と弁論後に開かれた報告集会で述べた。この件に関して京大は、頭蓋骨の下側が「ぜい弱」なためだと準備書面のなかで説明している。

原告側は当初から、遺骨の保管状況を調査する必要があると主張してきた。第1審では、空の保管ケースの写真と、棚に並べられているケースの写真が京大から提出されたが、ケース内の遺骨の写真は提出されなかった。また、原告側が京大総合博物館での現地検証を求めたのに対し、第1審は検証を行わないまま請求棄却判決を言い渡した。

他方、控訴審の大島眞一裁判長は前回2月の弁論において、京大総合博物館に自ら赴いて遺骨の保管状況を確認することを提案した。京大はこれを拒否したが、遺骨を撮影し報告書として提出することを検討すると譲歩したため、提出の条件や現地検証の可否を改めて非公開で協議することになった。これを受けて、今回の弁論までに4回の協議が行われた。

原告側によると、京大側は当初、原告が返還を求める遺骨26体全ての写真を出すことに乗り気ではなく、そのうち1体を選ぶよう求めたという。これに対し原告側は、「選べって言ったって(どれを選べば良いか)分からない」(報告集会での原告側弁護士の話)として、全ての遺骨の写真を提出するよう反論した。

結果的に京大は、全ての遺骨の写真や、収蔵室の見取り図、保管箱が並んだ棚の写真を提出した。原告側が遺骨の保管状況を争点にしていることや、裁判所が提出を求めたことを踏まえて「真摯に検討」した結果だと書面に記されている。写真を添付した報告書は、5月31日付け、京都大学総合博物館名で作成された。

なお京大は、写真を提出する条件として、当事者以外の閲覧を制限する措置を求めていた。しかし原告側は、憲法上の知る権利や裁判公開原則を前提として裁判所が判断する事項だと反論し、裁判所は閲覧制限をかけなかった。

今回の弁論の最後に大島裁判長は「検証を行わない」旨を述べた。傍聴席から上がった疑問の声に対しては、「写真が出たこともありますし」と答えた。

昨年9月に開始した控訴審は次回8月23日の弁論で結審する。原告側は、今までの主張をまとめた最終準備書面の提出を予定している。

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