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高裁判決 琉球遺骨 返還命じず 「ふるさとに返すべき」と付言

2023.10.01

高裁判決 琉球遺骨 返還命じず 「ふるさとに返すべき」と付言

判決前、大阪高裁に向かう原告ら=9月22日

京大が保管する琉球民族の遺骨の返還を求め、王族の子孫らが起こした訴訟を巡り、大阪高裁の大島眞一裁判長(石原稚也裁判長代読)は9月22日、請求を退ける判決を言い渡した。一方で、「先住民の遺骨はふるさとに返すべき」とも付言した。(=4面に特集

原告が返還を求めている遺骨は、京都帝国大学の研究者が1929年に沖縄県今帰仁村の百按司墓から持ち出したもの。原告が「盗掘」と主張する一方、京大は、警察等の許可を得ており違法性はないと反論していた。

原告は、墓に祀られた王族「第一尚氏」の子孫らで、原告らが遺骨の返還を請求する権利を有するかが主な争点となっていた。原告側は、憲法や国際人権法に基づき先住民族は奪われた遺骨の返還を請求する権利を有すると主張した。また、民法が、墳墓などの所有権は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めていることに鑑み、共同体で祖先を祀る琉球の慣習に従えば、遺骨の所有権を有すると主張した。

しかし判決は、憲法や国際人権法は原告らに具体的な遺骨返還請求権を与えないと判断した。また、遺骨の帰属関係は明確に定めるべきで、琉球の慣習を踏まえても不特定多数の者に帰属するとは解せず、王族の子孫である原告も、他の子孫らと同様に参拝しているだけでは「祭祀を主宰すべき者」には当たらないとして、原告に遺骨の返還を請求する権利はないと結論付けた。

京大が遺骨の保管を続けていること、原告らによる遺骨の実見申請を不許可にしたことを巡る慰謝料請求も退けられた。判決は、「遺骨の収集が刑事罰が科される違法な態様でされたことを認めるに足りる証拠はない」としたうえで、京大が収蔵室で箱に入れて遺骨を保管していることは死者を冒とくする行為だと原告が受け止めるのも「理解できなくはない」が、社会生活上許容されている限度を超えているとは評価できないとした。また、申請書に遺骨の利用方法等の記載がなかったことに鑑みれば、不許可も不当ではないと判断した。

法廷では判決主文だけが言い渡された。傍聴人で埋め尽くされた傍聴席からは「裁判無効」「不当判決」と怒号が飛んだ。

請求を退けた一方、大島裁判長は判決文の中で「遺骨の本来の地への返還は現在世界の潮流になりつつある」とし、「持ちだされた先住民の遺骨はふるさとに返すべき」だとも付言した。訴訟における解決には限界があり、原告、京大、教育委員会らで話し合いを進め、「適切な解決への道を探ることが望まれる」とした。

判決言渡し後に開かれた集会で、原告の玉城毅氏は、「どうしても法律を超えられないところ、そのなかでも次に繋げていきなさいという裁判長の考えではないかと思った」と述べた。

京大は本紙の取材に「本学の主張が認められたものと理解しています」と回答した。判決の付言を受けて遺骨の取り扱いを再考する考えはないか尋ねたところ、「本学の考えは裁判の中で明らかにしているとおり」でコメントは差し控えると答えた。

原告は上告を検討している。

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