文化

京大近所探訪VOL.19  百石斎

2023.10.01

京大近所探訪VOL.19  百石斎

集合住宅の駐車場脇にひっそり佇む

大文字山を見渡す吉田山の南麓は、真如堂や金戒光明寺など社寺旧跡が並び、落ち着いた情緒は散策にうってつけだ。そんな風情ある街の一角にポツンと残されているのが、今回紹介する「百石斎(ひゃくせきさい)」。琵琶湖疎水の設計者として知られる田邉朔郎(たなべ・さくろう)の書斎である。

田邉は東京の生まれだが、わずか23歳にして琵琶湖疎水の建設の主任技師となり、1900年には京都帝国大学の教授職に就いた。自邸の敷地内に書斎として百石斎を設計したのは、彼が工科大学長に就任した翌年、1917年頃とされている。

一見すると土蔵のように見えるが、実は田邉が得意とする鉄筋コンクリート造りの建築である。寺社の多い周辺の景観に合わせたか、あるいは現存しない母屋の意匠と揃えたものか。採光のため南北には各階2つずつ窓が配置され、独特の印象を与える。

百石斎は個人邸内にある鉄筋コンクリート建築として、国内では現存最古とも言われ、国の登録有形文化財に指定されている。まもなく色づき始める神楽岡の散策がてら、訪れてみてはいかがだろうか。なお、建物は現在も個人が所有・管理し、私有地にあるため、訪問にあたっては十分な配慮をされたい。(汐)

◆アクセス
左京区浄土寺真如町10-2
市バス「真如堂前」徒歩10分、
京大本部構内から徒歩約15分。

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