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京大近所探訪VOL.15 関西美術院(京都市左京区)

2022.11.01

京大近所探訪VOL.15 関西美術院(京都市左京区)

柔らかな光が差し込むアトリエ

京大周辺のおすすめのスポットを紹介する本コーナー。大学での勉強や研究に疲れ、ふとどこかへ出かけたくなったとき、このコーナーが行き先を選ぶ参考になれば幸いだ。(編集部)

平安神宮の東隣に位置する岡崎通。路地に入ると、「関西美術院」の札を掲げ、赤れんが塀に囲まれた建物が現れる。1906年の創立以来、今も変わらず門戸を開いている由緒ある画塾だ。

初代院長は洋画家の浅井忠(あさいちゅう)である。明治の末、美術団体・関西美術会が発足し、京都の洋画界は発展の機運が高まっていた。そこに浅井がフランスから帰国し京都に移住、聖護院洋画研究所を開く。入学希望者は増加の一途を辿り、研究所と他の画塾を統合し関西美術院を設立した。当時のカリキュラムは手本を模写する臨本模写、及び石膏写生を行う乙科、人体模写を行う甲科があり、美術史や解剖学の講義も行われていた。京都帝大の教員が講師に呼ばれることもあったという。梅原龍三郎や安井曾太郎といった、名立たる画家たちがここで育った。

現在の代表は画家の児玉健二氏だ。生徒は20人ほどで、退職した人や主婦の人が多い。「総人とか理学部とか、京大生も数人いましたよ」と語る。講義はないが、石膏デッサンは8時から20時まで、人体デッサンは9時半から12時20分まで取り組める。北向きの大きな窓から入る自然光は当時のままだ。手元の明るさを保ったまま光源を限定できる自然光は、明暗法の修得に有効だという。設計した武田五一は、時計台の設計や京都帝大建築学科の教授を担うなど、京大とも縁が深い。

「ここがあったから絵を描けた、生きてこられたと思う人がいるはず。そのためにここを続けていきたい」。児玉氏自身も87年に入学、もうひとりの教授と共に無償で教えている。デッサンをすれば、ものを見る能力がいかに低いか気づかされるという。「ぜひ京大生にも、構えずに来てほしい」週末には生徒以外も参加可能なクロッキー会が行われている。116年の時間を留める教室、柔らかな光あふれる空間の中で、絵を通して自分と向き合ってみてはいかがだろうか。
(凡)

関西美術院
京都市左京区岡崎南御所町
京都市営バス「岡崎道」下車 徒歩約3分

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