ニュース

大腸がん患者 術後1か月で復職 1年間の追跡調査で判明

2023.10.01

京大医学研究科の藤田悠介助教らの研究グループは、日本の大腸がん患者の手術後の就労状況を調査し、術後1か月程度で仕事に復帰していることを発表した。海外の研究と比較して、日本の就労状況は良好であった。今後、さらに臨床でのがん研究が行われて、患者の就労や治療に関する意思決定を支援する取組が活性化することが期待される。

大腸がんは日本で罹患数が多く、手術後の生存率は高い。そのため、多くの大腸がん患者が、手術後に仕事に復帰するなど日常生活に戻る一方、身体的・精神的な負担を抱えて生活することになる。海外では、大腸がん患者の術後の就労状況や仕事復帰を妨げる要因について研究が行われてきたが、これまで日本ではそのような研究がほとんど実施されてこなかった。加えて臨床現場で行われた実際の就労支援に役立つ研究も少なかったため、今回の研究が実施された。

研究では、大腸がんと診断された時に就労していた患者を対象に、就労に関するアンケートを実施。術後半年と1年後に追跡調査を行い、129例を解析した。その結果、▼手術から復職までの期間の中央値は1・1か月であること▼仕事を行っている人の割合は、術後半年時点で81%、術後1年時点で79%であることがわかった。また、▼がんの進行や人工肛門の作成、術後の合併症によって初回復職が遅くなること▼人工肛門を作成した場合や、患者が非正規雇用であるまたは個人収入が低い場合には、術後1年時点で仕事をしていない割合が高くなることが明らかになった。大腸がんの手術後の就労状況は、海外と比較して良好であった。

研究グループは、今後、大腸がんの患者が社会復帰を考えるときに、医者が治療予定や経過の見込みを適切に伝えることに役立つと述べた。ただし、術後1年以上の長期的な就労の実態を把握できていないことや、復職できない要因を考える際に、患者の諸条件を考慮できていないことを課題とした。

研究グループは異なる種類のがんにおいても就労に関する研究を継続している。今後、臨床での診断や治療に沿った研究が増えることで、がん患者の意思決定を支援することが期待できるとしている。この研究結果は9月8日にアメリカの国際学術誌「Diseases of the Colon and Rectum」にオンライン掲載された。

関連記事