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【国際卓越研究大学】 京大 第1回公募は落選  東北大が最終候補に

2023.09.16

文部科学省は9月1日、東北大学を国際卓越研究大学の第1回公募における認定候補に選んだことを発表した。同制度の公募では「数校程度」の採択が予定されていたが、東北大と同様に現地審査が実施されていた京大と東京大学は落選した格好だ。申請について湊総長は年頭挨拶で改革の「スタートライン」と位置づけ、議論を進めると宣言していた。2024年度以降に2回目の公募が予定されており、京大は「改革案の具体化の議論を全学的に進め、次の申請に臨む」としている。

国際卓越研究大学制度は、国際的に卓越した研究を行い、また社会に変化をもたらす研究成果を上げることが期待される大学を国が認定するもの。認定校が作成する体制強化計画に基づき、10兆円を運用する「大学ファンド」が1年あたり最大で数百億円を拠出し「世界と伍する」研究大学の形成を目指す。

その一方で、認定された大学は大学ファンドの元本維持・増強のための資金拠出や、年間3%の事業成長を求められる。また、学外者が半数以上を占める総長の人事権を持つ合議制機関の設置など、制度改革も課される。

今年3月を期限として行われた第1回の公募には京大や東大をはじめ、国私立あわせて計10大学が申請しており、書類審査と面接を経たうえで、京大、東大、東北大で現地調査を行うことが7月に発表されていた。

有識者会議は認定候補の選定にあたって「各大学が多大な労力を費やして申請した意欲や挑戦を後押しする」ためとして、各大学の体制強化計画案への個別の意見を公表している。京都大学は研究力の強化、研究成果の活用推進、そして自立的な大学組織の形成という3つの構造改革を掲げており、有識者会議は京大の体制強化計画案について「執行部の変革への強い意志は高く評価できる」と評価した。

一方、「国際標準の研究組織へ適切に移行するためには、 新たな体制の責任と権限の所在の明確化が必要」としたほか、「現在の執行部が有する変革への意志が、長期間にわたり大学として教職員に引き継がれる必要がある」との意見がつけられ、湊総長はじめ執行部の意思決定が全学に共有されていないことが指摘された形だ。国際卓越研究大学制度については、今年7月に湊総長がウェビナーを開いたものの「一方向的な」説明だとの批判がなされていた。京大は本紙の取材に対し「改革への強い意志と基本構想については高く評価された」との考えを示している。

京大は13日時点で、大学としてのコメントをHPやSNS上に掲載していない。一方、東大は1日、落選について「残念」だとしたうえで「引きつづき全学を挙げて改革に取り組」むという藤井総長のメッセージをHPに掲載している。東京大学は本紙の取材に対し、次回の公募について「詳細が分かった段階で改めて検討」する方針を明かした。また、総長のコメントは「社会に対して正確に発信する」ため掲載したとしている。

なお、東北大学が提出した体制強化計画は、▼未来を変革する社会価値の創造▼多彩な才能を開花させ未来を拓く▼変革と挑戦を加速するガバナンスという3つの公約のもとに、全方位の国際化などの6つの目標を達成するための19の戦略を提示したもの。有識者会議は「KPI (注:重要業績評価指標)やマイルストーン(中間目標)を明確にした体系的な計画」だと評価した。また、自律と責任あるガバナンス体制の構築に向けた学内リソースの再配分の必要性を執行部が強く認識しており「改革の理念が組織に浸透している」と評価した。

一方、研究資金等受入額の目標については「戦略の深掘りや見直しが必要」とするなど、最終的な国際卓越研究大学への認定と体制強化計画の認可については複数の条件を示した。

東北大学の大野総長は認定候補に選ばれたことを受け「大変光栄」だとしたうえで「世界をリードする研究大学を目指し、最終的な認定に向けて全学一丸となって引き続き力を尽す」としている。

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