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国際卓越研究大学への申請内容判明 研究力の強化方針など三本柱 京大 教職員向けに説明会開く

2023.07.16

国際卓越研究大学への申請内容判明 研究力の強化方針など三本柱 京大 教職員向けに説明会開く

京大の構想の「三本柱」

京大が国際卓越研究大学の公募に対し提出した「体制強化計画案」の内容が明らかになった。複数の関係者が本紙の取材に対し明かしたもので、研究力の強化、研究成果の活用推進、自律的な大学組織の形成の三本柱からなる。京大の同公募への申請内容について、初めて詳細が判明した。なお第1回公募の採択校候補は事実上、京大を含む3校に絞られており、文科省の有識者会議は7月に3校の現地調査を行う。(=2面に特集

京大は7月12日、国際卓越研究大学への申請について教職員を対象にインターネット上で説明会を実施し、湊総長がこれまでの経緯と現状、申請内容について述べた。京大は取材に対し「国際卓越研究大学構想について教職員の理解を深めるため」開催したと説明している。一方で、ある教員は本紙の取材に対し、説明会の実施形態は学生を「排除」していたとしたうえで、Zoom上でのウェビナーという「一方向的な形式で」開催されたために「納得できない回答に問い返すことができなかった」と不満を口にした。なお湊総長は説明会の中で、事前に寄せられた質問に対しては「できる限り」回答したとしている。

湊総長は体制強化計画のうち「研究力の強化」において、最も重視すべきことは「人への投資」だとした。そのうえで、研究力強化プログラムにおける助成金のうち約60%を研究人材や研究支援人材など「人への投資」に充てる計画を明らかにした。また、全ての研究者が容易にアクセスできる「先端技術機器」や、新技術開発の推進と高度技術者の育成を担う「テクノラボ」などを備えた「国際標準のコアファシリティ」を2050年までに5施設整備する計画も盛り込んだ。このプログラムを通し、質の高い論文を指す「Top10%論文」の割合を現状の11・2%から、2050年には15%へ引き上げることを目標の一つに掲げた。

二つ目の柱として、研究成果の活用を推進する「成長戦略本部」の設置計画を示した。この組織は、学内研究者への支援や海外展開支援等を進める部門や、戦略的な寄付活動を展開する部門などからなる。このプログラムを通した目標の一つとして、研究成果活用型の大学発スタートアップ企業創出数について、現状の累計110社から2050年には累計410社を目指すとした。

また、「自律的な大学組織」を目指す計画として、「社会の多様なステークホルダー」を構成員とする「法人総合戦略会議」を設置すると明かした。なお、法人総合戦略会議の構成員は半数以上を学外の有識者が占め、法人の経営方針の最終決定権限を持つことも示した。

理事長(現在の総長)、戦略立案や研究力強化プログラムなどを統括するプロボスト、財務戦略などを統括するCFO(最高財務責任者)の三者が緊密に連携して法人運営を行っていくとしている。

なお、これらのプログラムを通し、採択校に求められる事業成長は「年間平均3・5%」を目指すとした。現状は1100億円ほどの事業規模について、支援終了時には現在の2・3倍以上となる2620億円となる計画だとしている。また、大学独自の基金についても、支援終了時には1兆2500億円の基金を造成し「大学が自律的に運営できる財務基盤と体制を構築したい」としている。

湊総長はプログラムを通し、「自由で独創的な」研究の推進と、研究成果を活用した社会課題解決への貢献により大学独自の財務基盤を確立する「正の好循環」を形成することで、自律的に成長を続けられる「サステナブルな」大学を目指すと述べている。

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