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気候変動対策により貧困人口増加 2050年には1800万人増

2023.08.01

京大工学研究科の藤森真一郎教授が率いる、京大、立命館大、国立環境研究所の研究チームは、数値モデルを用いてシミュレーションした結果、気候変動への対策を行うことで、対策を行わない場合より貧困人口が多くなることを明らかにした。結果を受けて、チームは「(温室効果ガスの)排出削減策が必ずしも全ての人々にとって良い結果をもたらさない可能性がある」とし、気候変動対策に加え、「その副作用をどう軽減するかも重要な課題となる」と見解を示した。

研究チームは、エネルギーや土地利用、経済、家庭消費行動を総合的に考慮したモデルを用い、気候変動対策が貧困人口に与える影響を調査した。調査の結果、気温上昇を2度に抑える対策を行う場合、行わない場合に比べ貧困人口は2030年時点で6500万人、2050年時点で1800万人多くなることが分かった。さらに強い対策を実施し、パリ協定の努力目標である、気温上昇を1・5度に抑制する場合でも同様の傾向が見られた。この結果が生じる要因について研究チームは▼炭素税等により、温室効果ガス排出に直接関係するエネルギーや食料を中心に価格が上昇すること▼脱炭素化のための高効率の機器導入や化石燃料以外のエネルギー生産のための追加的な投資が所得を減少させることを挙げた。

研究チームは、気候変動対策が急務であるとしつつも、貧困増加を防ぐ政策設計が必要であるとした。そのうえで、気候変動緩和と貧困の削減の双方を実現する手段として、低所得者への炭素税免除や途上国への排出削減免除などを提案している。またチームは今回扱わなかった、気候変動影響による貧困の増加を考慮した研究も今後必要になるとした。

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