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理学研 雷雲通過時の放射線計測 市民と協力し雷の仕組み解明へ

2023.07.16

理学研 雷雲通過時の放射線計測 市民と協力し雷の仕組み解明へ

放射線検知に使用したコガモ(榎戸准教授提供)

鶴見美和・京大理学研特別研究学生、榎戸輝揚・理学研准教授、一方井祐子・金沢大学准教授らの研究グループは7月10日に記者会見を開き、一般市民の協力を得て行った「雷雲プロジェクト」で、雷の発生に関わる可能性のある放射線「雷雲ガンマ線」の検出に成功したと発表した。雷が起こる要因は未だわかっておらず、発生の仕組みを解明する手がかりになると期待される。

雷雲ガンマ線は、雷雲が通過する際にガンマ線が地上にふりそそぐ現象で、雷雲内に強い電場があることを示唆する。この雷雲内の電場と、はるか遠い宇宙から飛来する高エネルギーの粒子「宇宙線」との相互作用によって、雷のような大きな放電が起こると考えられている。当研究グループはこの仮説を検討するため、冬に雷が頻繁に起こる金沢市で、プロジェクトのサポーターとなった市民の自宅の庭に、放射線の検出器「コガモ」約70台を設置。2021年12月に雷雲ガンマ線を検出し、別の観測システムのデータと比較した結果、その発生場所から雷の放電が発生していたとわかった。この結果から、雷雲内の強い電場が放電の開始に関わった可能性が示されたという。

本プロジェクトは、専門家と市民が共同で研究活動を行う「シチズンサイエンス」の形をとっており、約50人の市民が参加している。榎戸准教授は会見で、「科学には役に立つ『技術』という側面だけではなく、それ自体が価値を持つ『文化』の側面もある」とし、シチズンサイエンスを通して「科学を市民と共有し、文化としても楽しむ場を提供したい」と語った。

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