インタビュー

〈京大知伝〉合唱に魅せられたマエストロ 理学部3年 中村匠吾さん

2023.07.16

〈京大知伝〉合唱に魅せられたマエストロ 理学部3年 中村匠吾さん

「指揮者らしいポーズを!」とのリクエストに笑って応えてくれた

京大には4つの合唱系のサークルが存在する。その中で唯一の男声合唱団が京都大学グリークラブだ。男声は、混声合唱においてはテノールとバスに分かれるが、男声合唱ではトップ・セカンド・バリトン・ベースの4パートに分かれる。混声合唱では男性と女性の声の高さの違いから煌びやかな響きが生まれる一方、男声合唱には特有の力強い重厚感がある。「芯のある声で歌うメロディーはやっぱりいい」。笑顔で語った。

中高では吹奏楽部に所属。声を使う演奏は楽器の演奏にも活かせるはず、という顧問の考えから、合唱が部活動の一環に組み込まれていた。これが合唱との出会いだった。徐々に合唱に魅了され、高校の時には初めて指揮を振った。楽器を演奏するよりも歌を歌いたいと思ったこともあるが、「常に合唱をやらせてもらってたんで、まあええか」と、吹奏楽部を辞めることはなかった。

大学に入学し、グリークラブに入った。コロナ禍で入部した数少ない新入生の中で、音楽経験者は中村さんだけ。結果、翌年から指揮者を務めることになったが、指揮と演奏とは「別物」だった。隣で一緒に歌うときと、前で指揮を振るときでは、歌声が耳に入るまでの時間が異なる。結果として、ブレス(息継ぎ)の合図を出すのにも苦戦する。指揮を通して合唱を作りあげることは本当に難しい。でも、「難しいから面白い」。

練習中、ときに身を大きく乗り出すこともある、情熱的な中村さんの指揮に目を惹かれた。合唱初心者が多いこともあって、グリークラブでは音楽を追求するというよりは、むしろ楽しく歌う雰囲気がある。そこが魅力でもあるのだが、中村さんは明るい口調で「こだわりたいことは山ほどあります」と話す。とりわけ詞の表現を重視しているという。歌詞が音と組み合わさり、意味を持った自然な文章となって聴衆に届く合唱。悩みながらも、理想の合唱に対する考えを教えてくれた。

指揮の際の真剣な表情と裏腹に、時にはお茶目な一面も見せる中村さんの優しい人柄から、京都大学グリークラブの魅力のひとつである団員同士の親密さを感じた。「やっぱり合唱が大好きです」。彼の合唱とグリークラブへの想いはこれからも続いていく。洛南高校出身。(郷)

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