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禁煙の秘訣は忍耐強さと慎重さ? リスク回避度、時間選好率の相関性を解明

2009.04.04

経済学研究科の依田高典教授ら研究グループが、禁煙の成功率にリスク回避度や時間選好率といった経済学的変数が関わっていることを明らかにした研究を3月6日発表した。この研究は禁煙中の689人に対しての5ヶ月間のアンケート調査の結果に基づいて行われた。この研究結果はイギリス医学誌『addiction』に発表される予定。

この研究では、リスク回避度が高く、時間選好率が低いほど、近年の成功率が低くなることが示された。リスク回避度とは不確実性を回避する度合いで、高ければ高いほど慎重であるといえる。時間選好率とは将来利得よりも現在利得を重視する度合いで、高いほど将来のことより現在のことを重視し忍耐弱いと言える。

つまりこの研究で示されたのは、こう言ってしまうと身も蓋もないが、忍耐強く、慎重な人ほど禁煙に成功しやすい、というあまりにも当たり前の結果だ。しかし、むしろこの研究の意義は大規模な調査の結果からリスク回避度、時間選好率といった経済学的変数を計測し、それらが禁煙成功率との関係があることを統計的に示したことにある。

もっとも、リスク回避度、時間選好率と禁煙成功率の因果関係が示せたわけではない。調査では、リスク回避度は禁煙開始時点で成功者と失敗者の間に明らかな差があるが、時間選好率においては開始時点においては両者の間に明確な差がなく、むしろ成功したものは低く(忍耐強く)なり、失敗したものは高く(忍耐弱く)なることが示された。

リスク回避度、時間選好率は8問の択一式の質問に対する答えから計測したもので、この分析手法が、今後他の経済行動にも活かされることが期待される。

調査は、インターネットを通じて行われ、1カ月以内に禁煙を開始した689人にたいして、毎月上記の8問に加えて禁煙の継続状況、心理状況、健康状況などの質問をしたもの。1本でも喫煙した場合は失敗と見なし、5ヶ月後の禁煙継続率は52.8%であった。

今後、個々人の経済学的変数をもとに禁煙指導や健康教育など予防的対策が確立されることが望まれる。

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