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工学研 脱炭素化の経済的な負担軽減へ 技術革新の効果を算出

2023.07.01

京都大学大学院工学研究科の藤森真一郎准教授ら研究グループは、社会変革や技術革新によってどのくらい脱炭素化費用が軽減するかを明らかにしたうえで、社会的負担をゼロにするために必要な条件を示した。今後、経済的負担を抑えられるとの認識を広めることで脱炭素化の推進が期待できるという。

2015年に締結されたパリ協定を始めとする気候変動に関する国際的な合意を受けて、現在140以上の国が脱炭素化の目標を掲げているが、目標の達成には世界全体でGDP比3%程度の費用が必要だとされている。

研究グループは、温室効果ガス排出に関連する社会経済条件からエネルギー消費量や二酸化炭素排出量などを算出する統合評価モデルを用いて、▼エネルギー消費効率の改善と電化の強化によるエネルギー需要の低下▼エネルギー供給システムの技術的進歩▼環境に配慮した食料システムへの移行▼脱炭素化投資の喚起による投資の増加の4つの社会変革を検討した。その結果、どの社会変革にも脱炭素化費用の低減に一定の効果があるものの単体では社会的負担をゼロにすることができず、すべての社会変革が同時に起こった時に21世紀全体を通して総コストをほぼゼロにすることができることが判明した。

この結果は社会経済的な施策は人々の意識の変化や不確実な技術進歩に依存するため、様々な分野が同時に脱炭素化のための対策を行うことが重要だと示唆している。一方で世界全体の経済負担がゼロ以下になっても経済的負担が大きな地域があり、格差や途上国の開発を考慮した包括的な視点が求められているとまとめた。今後は、脱炭素のための活動を社会全体で行うための変化を起こす方法や、それにかかる費用についての具体的な分析が必要になるとした。

本研究は、2023年5月4日に学術誌「Climate Action」にて発表された。

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