インタビュー

〈京大知伝〉「一人じゃない」 仲間とともに漕ぎ出す 工学部情報学科4年 小西悠太(こにし・ゆうた)さん

2023.06.01

〈京大知伝〉「一人じゃない」 仲間とともに漕ぎ出す 工学部情報学科4年 小西悠太(こにし・ゆうた)さん

瀬田川沿いの艇庫を背にはにかむ小西さん。着ているシャツは、東大戦を記念して毎年作られるもので、先輩から貰い受けた

「究極のチームスポーツ」と呼ばれるボート競技。人力の水上競技の中では最速で、時にマラソンランナーと同等の速度にまで達する。昨年度の全日本大学選手権、4人乗り(舵手なし)で準優勝を果たした京大ボート部。男子主将として総勢70人ほどのチームを束ねる。

中高は帰宅部でボートとは無縁だった。コロナ禍で対面新歓が難しかった影響もあり、入部は1回生の11月まで熟慮した。それでも、「なにかに挑戦したいという思いが強かった。最後は部全体で上を目指す熱意に惹かれた」と入部を決めた。

ボート競技は決まった距離でタイムを競う。漕手8人と舵手1人を乗せた花形のエイトでは、2000㍍を約6分で走破する。特に、クルーと呼ばれる乗り手の数は、速度に大きな影響をもたらす一方、クルーが増えるほど全体の動きを揃える難しさも増す。

「前後に決まった動きの繰り返しに見えるが、見た目以上に奥の深い競技」。ばらばらに漕いでしまうと、力が逃げてまっすぐに漕ぐことが難しくなる。クルー同士で練習をするのは、大会の間の数か月間しかないことも多い。そこで、足から始動して、体全体、腕へと至る漕ぎの動作を日ごろから全員で共有する。

この「京大の方針」を元に、ボートごとに練習を重ねる。水を掴むキャッチや、水を押すドライブなど、動作を細かく分割して地道に全員の動作を合わせていく。そうして、ピタリと揃った動きは水上で大きな推進力を生み出す。「競っている相手を抜き去る瞬間の喜びはかなりすごい」。

京大ボート部の強みとして、充実した環境を挙げる。部全体で所有するボートは80艇近くにのぼるほか、経験豊富な部員が院進するケースが多く、卒業後もコーチとして部に携わることができるからだ。9割近い部員が未経験で入部しながらも、上回生の技術を伝承していくことで、チーム全体として力をつけていく。

練習風景の一部。スタッフが練習風景を撮影し、クルー全体で共有する


印象的なのは、2年前の東大戦。OBからも「絶対に負けるだろう」と言われるなど、東大との実力差は明らかだった。その分、普段はしないような厳しい練習を重ね本番を迎えた。惜しくも勝つことはできなかったが、序盤は東大をリードするなど、下馬評を覆す躍進を見せた。「タイムという形で、自分の成長を感じられた」。

「6分間漕ぎ続けるのはしんどいが、1人じゃない」。仲間とともに過去の自分たちを抜き去り、昨年コンマ差で逃したインカレ制覇を目指す。西大和学園高校出身。(爽)

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