文化

技術と思索をつむぐひとびと 『跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー』展

2023.04.16

技術と思索をつむぐひとびと 『跳躍するつくり手たち:人と自然の未来を見つめるアート、デザイン、テクノロジー』展

髙橋賢悟作の《Re: pray》(2021年、井口靖浩氏蔵)。 静けさをたたえた姿が目をひく

左京区岡崎にある京都市京セラ美術館で、工芸や映像をはじめ多種多様な分野のアート制作で活躍する作家や団体、計20組に焦点をあてた特別展が開催されている。会期は6月4日まで。

本展は個々の作品の背後にある問題意識に基づき、4つのセクションに分かれている。例えば最初のセクション「ダイアローグ:⼤地との対話からのはじまり」では、木や土などを素材に、人間と自然との関係を模索した作品が並ぶ。京都で活動している陶芸作家・田上真也の《殻纏フ 溢ルル空》は、貝殻を割ったような形のうつわ、大小24点をひし形に配置。内側の青色は晴天のように爽やかで、大きさや形の差異が生むリズムは海の波を思わせる。命が生まれる海と終わったあとに向かう空を示唆することで、「生命の記憶を意識させる」作品を目指したという。

漆工や木工など、巧みな工芸技術にも注目したい。鋳金を用いる芸術家・髙橋賢悟は、花を埋め込んだ型を焼き、生花が焼け落ちた空間に溶かしたアルミを流し込むという精密鋳造法で制作している。アルミの厚さはわずか0・1㍉。花をアルミによって「再生」させることで、東日本大震災で受けた衝撃と死生観を取り入れたという。《Re: pray》にもその技法が活かされており、角に咲く花々の生命力と、簡素化された鹿の身体のコントラストが胸を打つ作品となっている。

作品には制作者の活動を紹介するパネルが付されているほか、複数のモニターが設置され、映像作家の林響太朗による各作家のインタビュー映像が流れている。つくり手の顔や作業の様子、作品に込めた思いに触れることで、目の前に並ぶ展示作品をより身近に感じることができるだろう。料金は一般1800円、大学生1500円。月曜休館で、開館時間は10時から18時となっている。(凡)

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