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吉田寮訴訟 7月結審、秋ごろ判決へ 寮生 証人尋問で対話訴え

2023.04.16

京大当局が吉田寮現棟の明け渡しを求めて寮生を提訴した裁判で、3月27日に2日目となる証人尋問が行われた。寮生5名が大学との交渉や寮生活を振り返って自治寮の意義を述べ、対話による解決を改めて訴えた。同日の報告集会で被告側の弁護士は、6月1日に進行協議が設けられて裁判所から和解が打診されると説明し、「大学がどう出るか注視したい」と述べた。7月20日の最終弁論で結審し、3か月ほど後に判決が出るという。

この日1人目の証人となった寮生は、18年夏に行われた大学との少人数交渉の様子を証言した。交渉の場で寮生側が老朽化対策の素案を示したものの、出席した川添信介理事(当時)が「君たちが寮を出て行ってから考える」などと述べて話し合いを打ち切ったという。尋問で寮生は大学側の対応について、寮自治会の解体が真の目的である旨を指摘した。一方、2月の尋問では、証人の京大職員が退去要求の真意を問われ、あくまで安全確保が目的と証言している。

また、今回の尋問で原告の代理人は証人の各寮生に対し、大学の手配する代替宿舎に転居すれば権利が保障されるとの認識を示して見解を尋ねた。3人目の寮生は共同生活での学びや経済面での価値に言及したほか、4人目の寮生が寮食堂での交流を通した教育的意義に触れて代替可能性を否定した。同様の問いに対し1人目の寮生は、京大の既存の授業料減免や奨学金では支援対象が限られると指摘したうえで、寮が受け皿として機能してきたと説明。「寮生の手で責任を引き受けてきたからこそ、柔軟で合理的な入寮選考が実現している」と訴え、「責任ある自治には程遠い」とする大学当局を批判した。続けて、双方の合意なく退去を迫る現状の方針では「将来の学生の学ぶ機会が損なわれる」と懸念を示した。閉廷後、寮自治会は文学部講義室で報告集会を開いた。この日2人目に尋問を受けた寮生は、大学との話し合いを経て新棟建設や食堂補修が実現した経験を振り返り、「団体交渉の後は職員と『お疲れ様』とねぎらいあい、楽しかった。今の当局の対応は、寮自治会だけでなく理事や職員が努力してきた歴史をないがしろにする」と訴えた。5人目として研究活動と寮生活との関わりを証言した寮生は、「私の発言のうしろには何百通りの個人的な事情があるということを裁判官には想像してもらえれば」と願った。

訴訟は19年4月から続く。大学と寮との確約書の扱いや現棟の老朽化の度合いが争点となる。6月の協議は非公開で、第一審最後の弁論は7月20日11時から京都地裁大法廷で開かれる。

金沢大 泉学寮「廃寮」迎える


1965年設置の金沢大の男子寮「泉学寮」について、大学当局が老朽化などを理由に寮生へ退去を求めていた問題で、期日とされていた4月7日、最後の寮生が去り、職員が建物を封鎖した。寮生有志は19年2月に大学当局から「何の前触れもなく廃寮を通告」されたとして、寮の存続を求める署名約4千筆を大学に提出していた。

3月27日の吉田寮訴訟の報告集会では、泉学寮生が動画を寄せ、「今後も声を上げることが大切」と呼びかけた。

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