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吉田寮訴訟 「確約書」正当性巡り応酬 第16回口頭弁論 証人尋問

2023.03.16

吉田寮現棟・食堂からの立ち退きを求め京大当局が寮生を提訴した裁判の第16回弁論が2月27日、京都地裁で開かれ、寮生が大学と結んだ「確約書」の扱いなどについて3名の証人が証言した。証人尋問は2回にわたって行われ、次回の尋問では寮生が証人となり、3月27日午前11時から京都地裁で行われる。

寮生提訴への手続き執行当時の厚生課職員が一人目の証人となった。寮生が大学と結んだ「確約書」について、原告側の証人は役員による決裁を取っていないと述べ、副学長が個人の責任で自治会と結んだものだと主張した。「確約書」には次期の担当理事に引き継ぐ旨が書かれていることに言及し、仮に「確約書」が正式な書類であれば引き継ぎは必要ないはずだと述べた。退寮勧告に至ったことについて、定員超過や自治会の運営との兼ね合いを問われ、あくまで老朽化を問題視した結果の判断である旨を述べた一方、在任中に老朽化対策の具体的な検討や耐震調査は行っていないことを証言した。寮生に対しては「安全が確保されないので退寮するべきだ」と述べた。

続いて、寮問題を扱う学内委員を務めた木村大治名誉教授と、元吉田寮執行委員長の寮生が証人となった。木村氏は14年度から2年間、学生生活委員会第三小委員会で寮側の「確約書」案を精査した経験を明かし、副学長も「確約書」を確認していたと述べた。また、大学が寮生を訴える理由について、寮の建物の耐久性の問題以上に、寮生が大学にとって「都合の悪いもの」だからではないかと述べた。大学の傾向として「全学的な話し合いが行われなくなっている」と危機感を露わにし、大学が寮生と直接対話をすることによる解決を望んだ。

寮生は寮の自治会・組織運営についての陳述を行った。入寮者名簿に氏名を「公表できない」と記載されている寮生については、寮に居住しているという理由で大学当局が学生を処分した他大学の例を挙げ、処分を防ぐために2018年以降に入寮した学生の名前を伏せたと明かした。また、名前を伏せた寮生は入寮資格を満たしていることも証言した。大学の求めに応じて入寮募集を取りやめていた場合「福利厚生を享受できる人が減っていた」と意義を語った上で、話し合うべき場所は裁判所ではなく大学であるとし「話し合いによる問題解決を願う」と述べた。

吉田寮自治会は同日午後6時から、京都教育文化センターで報告集会を開催した。弁護人は木村氏の証言について、すでに退職しているため大学に逆らうこともできる「自由な」証言だったと振り返った。木村氏も登壇し、近年京大はトップダウンによる判断が多くなっており「自由の学風が空疎に感じる」とした上で「個人的にも寮を応援していきたい」と語った。

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