インタビュー

〈京大知伝〉感情を揺さぶる応援 紡ぎ出す 総合人間学部2年 指川啓(さしかわ・はじめ)さん

2023.02.16

〈京大知伝〉感情を揺さぶる応援 紡ぎ出す 総合人間学部2年 指川啓(さしかわ・はじめ)さん

練習場所の総合体育館前を背にポーズをとる指川さん。週に3回ほどこの場所で練習している。着ている学ランは、卒団したリーダー部のOBのものを受け継いだ。

リーダー部・ブラスバンド部・チアリーダー部の3部からなる京都大学応援団を団長として率いる。応援対象は京大と京大の全学生だ。入学式などの行事のほか、野球部やアメフト部などの試合にも出向いてエールを送る。

現在は3部をあわせて11人で活動する。部員のほとんどは応援未経験で入団した。加えて、コロナ禍で対面新歓ができなかった影響もあり、幹部代の新四回生は不在だ。それでも観客席いっぱいに応援団が詰めかける私大の応援団に比べ、「練習からまとまって、一体感のある『強い応援』をしている。ここは(他の応援団にも)負けていない」と胸を張る。

高校時代、自校のラグビー部が全国大会に出場した際、応援に出向いた。応援団が主導することで、観客席がより一体となったと感じた。「応援団がチームを押し上げて、それで勝ったときの感動を分かち合える。そういうものに惹かれた」。大学入学と同時に応援団に入団した理由をこう語る。

応援対象を、そして見る人を感動させる演舞を目指す上で、「応援って意味があるかわからない。でも、そういうものに意味を持たせるには、もうそれを極めるしかない」と覚悟を決めた。だからこそ、選手と同じく勝ちへの執念を燃やし、腕の角度や足の上がり方など細部にまでこだわって練習を重ねる。

選手と一体になって応援したとき、感情が大きく揺さぶられたと感じることがある。印象的なのは、硬式野球部が満塁本塁打でサヨナラ勝ちした昨秋の近大戦だ。一度も勝ち点をとったことのない近大相手に京大が粘り強くくらいついた。「延長に入り、観客も選手も疲れ切った中で、最後まで全力で応援し続けた結果得た勝利は何にも代えがたい」と充実した表情で振り返る。

今代の理念として「紡ぐ」を掲げる。声出しの自粛などコロナ前後で大きく変わった応援様式。以前の応援文化を継承しつつ、コロナ前を知らない世代として、過去の模倣に留まらずよりよい応援の形を模索するという意味を込めた。

時代に合わせた変化も重要なテーマだ。応援団の良さとして規律や慣習に基づく「緊張感」を挙げる一方、従来の根性論のようなものに頼った活動からの脱却も課題として取り組む。「体育会の雰囲気に慣れていない人にも、応援団の良さを理解してついてきてもらえるように活動していく」。

「紡ぐ」には糸を紡ぐ蚕の意味もある。「本当は、下回生としてまだ繭の中にいたいような状況でも、その繭を突き破って成長しなくてはいけない」。覚悟を胸に、今春もエールを送り続ける。「応援対象への熱量が見る人に伝わり、応援の良さが広まれば」。浦和高校出身。(爽)

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