インタビュー

〈京大知伝〉「緋彩」の演舞で京を彩る 農学部2年 宇治原千裕(うじはら・ちひろ)さん

2023.01.16

〈京大知伝〉「緋彩」の演舞で京を彩る 農学部2年 宇治原千裕(うじはら・ちひろ)さん

演舞中の宇治原さん。「緋色」はやや黄色がかった鮮やかな赤色を指す。(写真は本人提供)

「よろしくお願いします!」静寂の中に声が轟き地を鳴らす。色とりどりの衣装を身にまとった70人がピッタリと揃った演舞を披露し、見るものを圧倒する――高知の夏の風物詩であるよさこい。よさこい節の代わりに「京都の通り名歌」を組み込むなど独自のアレンジを施し、そこに、大学生らしいキレと激しい動きが加わる。

インカレサークルとして10以上の大学からメンバーを集める、よさこいサークル・彩京前線(さいきょうぜんせん)。17代目代表としてチームを牽引してきた。

彩京前線に所属していた兄の演舞を高校生の頃、間近でみた。一糸乱れぬ動きとその迫力に衝撃を受け、一瞬で彩京前線の大ファンとなった。「自分もあのステージに立ちたい」。憧れを現実に変えるべく、京大を志した。

「代表」という肩書だが、演舞の構成にはあえて関わらなかった。演舞を構成する上では、構成の良し悪しを客観的に評価し、比較する必要がある。一方、自身を「演舞がというより、彩京(前線)が好き。だからどの演舞を見ても(それが改善すべきものでも)やっぱ彩京やなって思って受け入れてしまう」と冷静に分析。最終的に演舞は全員で作るのだから、割り切ってメンバーのモチベーションを上げる役割を果たそうと決意した。

幼いころから踊りが好きで、高校時代はチアリーディングをしていた。「一人一人に目が行くチアリーディングに比べ、よさこいは『群』で魅せる踊り」とその違いを語る。集団での舞踊が全体としての迫力を生む一方、当事者意識を芽生えにくくすることもある。コミュニケーションを密にし、練習の前後で目標や到達点を伝える意識を持った。

彩京前線の特徴は「王道」のよさこいだ。「コミカルな演舞やゆるく踊るよさこいも多いが、彩京前線は学生の若さがほとばしる和風の演舞を最初から最後まで貫く」。これは鞍馬の火祭りをモチーフにした17代目の演舞「緋彩」でも同じだ。

代表就任時に目標としたのは、毎年10月に開催される京都学生祭典での大賞獲得。そのために、「一人一人のボルテージがMAXなよさこいを目指した」と語る。群で魅せるよさこいの魅力はそのままに、近くで見れば見るほど、メンバーの個性とよさこいへの情熱が現れる演舞を目指した。祭りへの出演と練習を重ね、振りや衣装の色使いなど細かな工夫を重ねてきた。

昨年の京都学生祭典は惜しくも2位に終わったが、和のテイストを生かした持ち味の「王道の演舞」は会場の平安神宮を背にすると一層、際立ったように感じた。「悔しい結果だったが、踊っている時は本当に楽しかった。最高の景色が見れた。」と充実した表情で振り返る。

現在は学業に専念する一方、いちファンとして後輩たちの試行錯誤を応援する。「内からも外からも、もっともっと愛されるチームになってほしい」。須磨学園高校出身。(爽)

引退公演の様子。衣装や振り、道具は毎年新たに制作する。(同上)

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