インタビュー

〈京大知伝〉「みんな、一度落語を聞いてみて」  工学部2年 永野泰地(ながのたいち)さん

2022.12.16

〈京大知伝〉「みんな、一度落語を聞いてみて」  工学部2年 永野泰地(ながのたいち)さん

落語を口演する永野さん(本人提供)

京大落研には、決まった練習メニューや練習日がない。寄席が近づくと、各自が好きに演目を選んで、プロの動画を見ながらほぼ独学で練習する。寄席は年に4、5回、コントや漫才によるお笑いライブも開く。近年は漫才志望の入部者が増え、ライブの頻度を増やしている。大学サークルではCDで代用することも多いお囃子を、学生が演奏するのも特徴だ。

永野泰地さん(屋号「葵家竹生」)は、今年の秋に部長になった。幹部の選出は投票で行われるが、投票用紙に何を書いてもいいルールのため、多くの部員がボケに走って、決定にはいつも時間がかかる。「この決め方は賛否が分かれますが、僕は好きです。最後は、引き受けなければ再投票になるという、責任感です」と笑う。部長の役目は、スケジューリングや会場決め、当日の設営の指示出しなど。総勢70名の大所帯を、裏から支えている。

落研に入るまでは、落語について全く知らなかった。入部したのは、お笑いが好きだったことと、高校で演劇部に所属していて、演じることを続けたかったから。思い返せば、高校の頃から、自分で脚本を書いて文化祭でコントを披露していた。笑いが好きという思いは今も昔も変わらない。

入部したての時に、先輩の高座を見て落語の面白さを知った。噺の内容だけでなく技術の高さに圧倒され、「面白い」を超えて、「かっこいい」と思った。今では、漫才やコントに負けないくらい、落語にハマっている。話の筋は同じでも、演者によって笑いの起きる場所が変わるのが、神秘的なのだ。思うに落語は、技術と人間性の掛け算なのではないか。単純に上手い人の技術だけを真似しても同じところではウケないし、それが面白い。

演劇出身のため、大きな​​声で勢いよく演じることが得意だ。一方、落語と演劇の演じ方には、異なる部分もある。落語はあまり演じ込みすぎると不自然になる。実際、プロの噺家は、声の高さをあまり変えずに、口調を少し変えるだけでキャラクターを演じ分ける。プロはすごいと思う。

部長としての目標は、京大生のような若い人にもっと落語を見てもらうこと。落語自体のハードルを下げるため、短く編集した落語の配信なども考えている。「落語に触れたことがない人も、ぜひ一度聞いてみて」。落語って面白い、そう気づいてくれる人が、1人でも増えることを願っている。(聞き手・桃)

補足情報
第191回
京大落語を聞く会
12月17日13時〜16時
ユーチューブ配信あり
ユーチューブチャンネル
​​https://www.youtube.com/user/ikuoaraki

落語だけでなく漫才にも取り組む(本人提供)

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