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フィールド研 深海で落ち葉を利用 イソメの生態を解明

2022.12.01

山守瑠奈(やまもりるな)・フィールド科学教育研究センター助教らの研究グループは11月4日、深海に生息するクシエライソメが巣材や食物として、照葉樹林の落ち葉を利用することを明らかにしたと発表した。今後、陸上生態系を保全する際に、海洋環境に与える影響についての重要な知見となることが期待される。

研究グループが扱ったクシエライソメは、無脊椎動物の環形動物門に属するゴカイの仲間。ナナテイソメ科に属する種は、自らが分泌した糸と周囲の堆積物を利用して巣を作成することが知られていた。その中でも、クシエライソメは巣材に落ち葉を用いる。今回、研究グループは、三重県の水族館の底引網調査で採集したクシエライソメの行動やその巣を詳しく調べた。その結果、河川下流域の照葉樹林にあるタブやバリバリノキの落ち葉が、巣材や食物に利用されていることが分かったという。

深海の生態系は、陸上や浅海の生態系から流入する有機物によって支えられている。三重県の尾鷲沖の海底には、落ち葉溜まりが形成されており、今回の研究で利用したクシエライソメはそこから約5年前に採集したという。今回、陸上から河川を通って深海まで流入した落ち葉を、クシエライソメが利用していることが明らかになったため、深海の生態系において河川流入が重要な要素であることが示唆されたという。この研究成果は、英国の国際学術誌「Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom」にオンライン掲載された。

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