インタビュー

〈京大知伝〉ハーモニーをもとめて  工学部2年 曽祇 世翔さん

2022.11.16

〈京大知伝〉ハーモニーをもとめて  工学部2年  曽祇 世翔さん

練習に勤しむ曽祇さん

京大に関係する人に焦点を当て、京大のイマをもっと「知」り「伝」える企画、「京大知伝」。前回は、京大鳥人間チームShootingStarsを特集した。今号では、京大アカペラサークルCrazyClef所属の曽祇さんを取り上げる。

あなたの音楽が聴きたいーー祖母に推されて経験ゼロから入部。今ではグループを牽引する1人にまで成長した、京大アカペラサークルCrazyClef所属の曽祇世翔(そぎせいが)さん。美しく澄んだ歌声の裏には、血のにじむ努力の跡があった。

辺りが夕暮れの気配に包まれる頃、ぽつりぽつりと姿を見せる部員たち。互いに雑談を交わす。和やかな雰囲気だ。5人集まったところで発声練習を始める。表情がキュッと引き締まる。喉が温まるといよいよ曲に入る。スマホでプロの音源を聴き込み、理想の歌い方を身体に落とし込んでいく。1単語ずつアクセントや音のつながりを確認し、納得のいくまで同じパートを何度も繰り返す。互いに現状を分析し合い、数歩先を行く理想に擦り合わせる緻密な作業だ。音の調子が合わず、「言えんてー」と頭を抱える場面も。それでも「もう一回やろか」と立ち上がる。曽祇さんは1回3時間の練習を、週4回こなす。加えて毎日最低1時間の自主練も欠かさない。現在担当中の曲数は10を超えるという熱の入れようだ。

中学、高校ではオーケストラでチェロを弾いていた曽祇さん。歌といえば、カラオケで嗜む程度だった。当然アカペラは未経験。独唱とも合唱とも違う、アカペラ独特の奥深さに触れたという。独唱のように1人の声だけで創りあげるのではない。アカペラでは1つのパートを1人で担当するため、自分のリズムやトーンの狂いが全体の響きに直結する。合唱と比べてひとりひとりにかかる責任が段違いだ。練習を録音し、家で 聞き返す時期が続いた。改善点を楽譜に書き込み、次の練習で共有する。それでも自分の望む音がなかなか出せない。「しんどかった」と思わず本音を漏らした。それでも彼のアカペラ熱は止む事を知らない。

「聞こえるべき音が聞こえたときの気持ちよさには代え難い。ちゃんとハマった時は『これだな!』って」。困難だからこそ、全員の音が揃った瞬間の感動はひとしおだ。「一から自分で音楽を作り上げていく感覚」の虜になったという。

今ではアカペラのおかげで沢山の仲間ができ、アカペラが生活の中心にある。曽祇さんにとってアカペラとは、新たな世界への「きっかけ」だった。アカペラに生き、アカペラに生かされる人生がそこにはあった。(順)

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