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加速的成長の仕組み、解明か ヴォリシチンの意外な働き 昆虫COE

2008.11.06

吉永直子・農学研究科研究員(昆虫COE)と森直樹・同研究科准教授らの研究グループは、昆虫が外敵に発見される要因となっていた分泌成分ヴォリシチンが、昆虫自身にも利益をもたらすことを発見した。米国科学誌「米国科学アカデミー紀要(Producing of the National Academy of Sciences USA)」の電子版に掲載された。

昆虫が植物を食べる際に出す唾液成分ヴォリシチンは、植物に特別な揮発成分を放出させ、それによって外敵である寄生蜂などを誘因させることから、昆虫自らにとって不利益な点が明らかになっていた。今回、当該物質ヴォリシチンが、昆虫自身にも有益な働きをしていることが発見された。

第一に、昆虫の体内でグルタミンの貯蔵体として機能していることが分かった。分子動態を追跡した結果、グルタミンがヴォリシチンと化して腸管内腔へ分泌され、必要時に再びグルタミンへ加水分解され、体内へ吸収されるシステムが明らかになった。

第二に、窒素代謝を活発にさせる機能が分かった。ヴォリシチンの合成元成分「リノレン酸」を用いて対称実験したところ、リノレン酸を添加したほうの窒素吸収率が大幅に向上した。

森准教授はこれらから「(昆虫の)爆発的な成長の基盤として、ヴォリシチンが機能しているのではないか、との結論に達した」と話す。

※昆虫COEは、正式名称「京都大学21世紀COEプログラム『昆虫科学が拓く未来型食料環境学の創生』」(代表=藤崎憲治教授)

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