伝統と現代の邂逅 『響き合うジャパニーズアート』展
2022.11.01
琳派は桃山時代後期に始まった日本美術の流派の一つだ。尾形光琳や俵屋宗達が代表的な作家で、特に宗達の屏風画『風神雷神図』は広く知られている。一方、江戸時代に活躍した伊藤若冲は傑出した個性の絵師と言われ、近年では再評価の動きが進んでいる。
今回の企画展では、細見美術館が所蔵する琳派や若冲の作品とともに、現代の日本画「琳音」が展示される。
「琳音」は、日本のポップカルチャーを代表するキャラクターを、琳派や若冲の作品を借りて表現するプロジェクト。鉄腕アトムやブラック・ジャックといった手塚治虫作品のキャラクターから初音ミク、リラックマまでが登場し、その射程は広い。
どれも絵師の類いまれなる技量と感覚に嘆息する作品ばかりだが、特に『初音ミク×鶏』は圧巻だ。若冲が得意とした鶏が精密に模写されるだけでなく、透明感ある初音ミクの身体が流麗に描かれていた。初音ミクファンはもちろん、一般の美術愛好家にも鑑賞を勧めたい。
日本画というと、若干の敷居の高さを感じる向きもあるだろう。掛け軸は仰々しいし、遠近法を無視したデフォルメの極地とも言える描きぶりはとっつきにくい。だが、本展では、私たちになじみの深いキャラクターを通じて、日本美術を代表する琳派・若冲の作品や精神に触れることができる。初心者にとっては絶好のチャンスといえる。
入場料は大人1400円、学生700円。会期中は毎週月曜日が休館日となっている。(涼)