インタビュー

〈京大知伝〉その手で「鳥」を造る 工学部2年 松原知樹さん

2022.10.16

〈京大知伝〉その手で「鳥」を造る 工学部2年 松原知樹さん

プロペラを手に取る松原さん

「昨年度は鳥コン出場を逃し、テストフライトもうまくいかず悔しい一年だった。今年度はその雪辱を晴らしたい」。そう語るのは、工学部物理工学科2年 松原知樹(まつばらともき)さん。京大鳥人間チーム ShootingStarsでは設計者として制作陣を取りまとめる。

鳥人間コンテストを初めて知ったのは小学生の頃。テレビで見たのがきっかけだが、「あの頃はまさか自分が飛ばす側になるとは思ってもいなかった」と笑う。入学後、吉田南構内の立て看板に背中を押され、「バードマン」になる決意をした。

京大鳥人間チームの機体の特徴は、プロペラが機体の一番後ろにつく「ケツペラ」だ。プロペラが生み出す乱れた空気が、翼やコクピットに当たって滑空の効率が下がるのを防ぐ。この仕組みは現在、学生チームの中で京大だけが採用している。実に25年近く踏襲されてきた伝統ある設計だ。

機体は骨組みのカーボンをはじめ、発泡スチロールや断熱材など身近な素材も使いながら作製する。強さと軽さを両立するための工夫だ。一方で、緻密な計算をもとに仕上げた機体も、実際に飛ばしてみないとわからない部分も多い。そこで重要なのがテストフライトだ。

しかし、コロナ禍以前は吉田南グラウンドで実施したテストフライトも、今は遠く離れた岡山県で行っている。ボックスを使える時間も大きく制限され、機体製作に割く時間は少なくなってしまった。向かい風が吹き荒れる中、松原さんらは製作スケジュールの見直しなど工夫を重ねる。

憧れるチームは、今年の鳥人間コンテストを制した東北大学 Windnauts。36㌔もの飛行と鮮やかな旋回を見せた精巧な機体をイメージし「あんな機体が作れたら」と目を輝かせる。

「学生が青春を懸けて造る人力飛行機。その面白さが少しでも多くの人に伝われば」。先人たちの叡智を結集した、伝統のプロペラとともに、来年こそは琵琶湖の空へ飛び立つ。(爽)

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