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シジュウカラ 言語能力を確認 2語をまとめる「併合」の力

2022.10.16

京都大学白眉センターの鈴木俊貴特定助教ら研究グループは、鳥類の一種であるシジュウカラが、連続する2つの鳴き声を1つのまとまりとして認識する能力を持つことを実験で確認した。

「買って」「きて」という2つの言葉を、同じ話し手が連続して発した場合、聴き手は「買ってきて」という1つのフレーズとして認識する。このような2つの要素を1つにまとめる能力は言語学で「併合」と呼ばれる。

シジュウカラは「ピーッピ」という鳴き声に対して警戒し、「ヂヂヂヂ」という鳴き声に対しては集合する。さらに、「ピーッピ・ヂヂヂヂ」という連続した2つの鳴き声に対しては、警戒しながら集合することが知られていた。だが、2つの鳴き声を別々に理解するのか、まとめて理解するのかは明らかでなく、「併合」の能力を持つかどうか不明だった。

グループは2020年の10月から12月にかけて群馬・長野両県の山林で、シジュウカラの群れ64群を対象に実験を行った。実験ではシジュウカラの天敵であるモズのはく製と2つのスピーカーを用いて、「ピーッピ(警戒)」「ヂヂヂヂ(集合)」という鳴き声を複数の方法で再生し、シジュウカラのモズに対する行動を観察した。その結果、2つの鳴き声を「ピーッピ・ヂヂヂヂ」という順番で、1つのスピーカーから連続再生した場合、多くがモズに威嚇や接近といった行動をとる一方、再生の順番を逆にしたり、2つのスピーカーから再生したりすると、ほとんどが行動をとらなかった。このことから、シジュウカラは2つの鳴き声を1羽が一定の順番で組み合わせた場合にのみ、1つのまとまりとして受け取ることが分かった。

論文は9月24日にNature Communications 誌に掲載された。ヒト以外の動物に「併合」の能力が認められたのは今回が初めてで、ヒトの言語と動物の意思疎通の間に、進化的な連続性が示唆された。最近では、オナガザル類や鳥類の一部が2つの鳴き声を連ねて発することも知られており、動物の意思伝達をささえる認知基盤について、同様の研究手法により理解が深まることが期待される。

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