インタビュー

〈京大知伝〉その脚で琵琶湖の空を漕ぐ 工学部2年 中村健人さん

2022.10.01

〈京大知伝〉その脚で琵琶湖の空を漕ぐ 工学部2年 中村健人さん

中村さんと愛車。後ろが作業場

京大に関係する人に焦点を当て、京大のイマをもっと「知」り「伝」える新企画、「京大知伝」。
今号と次号(10月16日号)では、京大鳥人間チーム ShootingStarsの2人を取り上げる。

「『空を飛んでみたい』という誰もが一度は思ったことを、自分たちで作った機体で実現できるんです」。力強く語るのは、工学部物理工学科2年の中村健人(なかむら・けんと)さん。所属する京大鳥人間チーム ShootingStarsでパイロットを務める。

鳥人間に魅了されたのは中学生の頃。テレビで鳥人間コンテストを見たのがきっかけだ。現役で神戸大に合格するも、浪人して京大を目指した。「神戸大は鳥人間の活動が活発でなかったのも浪人の理由の一つ」と少し照れながら語る。鳥人間チームには機体製作を中心に多様な役割があったが、趣味がサイクリングだったこともあり、パイロットを志した。

中村さんが乗り込むコックピットは、空気がこもりやすく、本番の7月には40℃に達することもある。また、空気抵抗を最大限減らすため後傾姿勢になるよう設計されており、自転車のように自分の体重を足に乗せてペダルを漕ぐことができない。加えて、空の上では墜落の危険があるため足を休めることも難しい。

このような過酷な状況に耐えるため、毎週200キロ近くロードバイクで走り込むほか、暑さに慣れるために厚着をして自転車を漕ぐなどハードな練習にも精力的に取り組む。

体重の管理も大切な仕事だ。「鳥コン」が近づくと、設計時の体重から大きく超過しないように食事にも気を遣う。少しでも体重を軽くするために、過去には髪の毛を剃って鳥コンに臨んだ先輩パイロットもいたというから驚きだ。

鳥コンが行われる琵琶湖は湖陸風(こりくふう)と呼ばれる強風が吹くことで知られる。「どれだけ機体が良くても、パイロットが練習を重ねても、風によってはすぐに(機体が)落ちてしまう」。不条理にも思える環境に打ち克ち「鳥」になるべく、中村さんは鍛錬を惜しまない。来年の目標は、昨年度叶わなかった鳥コンへの出場と、チーム記録を上回る10キロの飛行だ。

厳しい練習に耐える秘訣を聞くと、「自転車に乗っている人はキツイこと好きなんですよ」と笑いながら答えてくれた。昨年度の悔しさをバネに、中村さんは来年に向け漕ぎ出している。(爽)

関連記事