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コンソーシアム結成を検討 ヒトⅰPS細胞作成成功で

2008.01.16

京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授がヒトiPS細胞の作成に成功したことを受け、文部科学省は京都大学を核に据えたiPS細胞研究コンソーシアム(共同体)を組織する方針だ。海外との研究競争を見据えた「チームジャパン」の結成に、日本中から大きな期待が寄せられている。

iPS細胞は人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell)の略で、あらゆる細胞へと分化する可能性を秘めた万能細胞である。例えば、iPS細胞から神経細胞へ分化させて脊髄損傷を治療するなど、再生医学への応用が期待されている。また、従来の再生医学の研究は主にES細胞と呼ばれる胚性幹細胞(embryonic stem cell)を用いて行われてきたが、ES細胞は作成の際に受精卵を使用するという倫理的に大きな問題があった。その点iPS細胞は皮膚細胞由来であるため、受精卵使用に伴う問題は解決できたと言える。研究者だけでなくブッシュ米大統領やローマ法王庁が即座に歓迎の意を表したことは、受精卵使用に伴う倫理的問題の解決が、いかに世界に対して大きなインパクトを与えたかを物語っている。

昨年の12月25日、「多能生幹細胞のインパクト―iPS細胞研究の今後―」と題されたシンポジウムが、科学技術振興機構(JST)主催で開かれた。シンポジウムの会場となった京都市内のホテルには市民や難病患者を含めおよそ900人が詰めかけた。予想を上回る参加人数だったため、その模様は百周年記念ホールでも同時中継された。

シンポジウムの中で山中教授は、「海外の研究所に特許押さえられて医療費が高くなる可能性があるため、日本の研究体制を早急に整える必要がある」と述べた。そして、「今までは一人で駅伝を走っているようなものだった。それでは海外のチームには勝てない」と述べ、チームジャパンで研究に臨みたいとの姿勢を示した。

iPS細胞研究コンソーシアムの目的として、研究者同士が最新の研究テーマについて直接議論できることや、知的財産の一括管理によって、最新の研究成果を比較的自由に共有できることなどが具体的に挙げられた。その背景には、未だ研究室間の連携が柔軟に働いていないという現状がある。山中教授は「(iPS細胞を用いた研究を行っている研究室に対し、現段階で最新の)第4世代iPS細胞を使って欲しいが、大学が違うなどの理由で簡単に譲渡できない」と話し、研究者同士が密に連携し合えるコンソーシアムの必要性を強調した。

また今年1月10日、iPS細胞研究コンソーシアムの中核を担う施設として「iPS細胞研究センター」を設置することを松本紘理事が明らかにした。センター長には山中教授が就任する。2年後の建物完成を前に、京都市内の賃貸施設で早急に研究活動を始める方針だ。

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