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山中教授 所長退任 iPS研 後任に髙橋淳教授

2022.01.16

京大は12月8日、次期iPS細胞研究所所長に髙橋淳教授が選出されたことを発表した。2022年3月31日で任期を終える山中伸弥現所長に代わり、4月1日より2年間の任期を務める。

12月2日に開かれたiPS研の教授会で、退任の意向を持っていた山中氏が髙橋氏を推薦。出席した教授の過半数が賛成し、髙橋氏が後任に選出された。山中氏の所長在任はiPS研が設立された2010年以来続けての6期12年になる。山中氏は報道向けの発表で、退任の判断について「この数年は、研究者としての最後の期間は自身の研究に注力したいという思いが強くなっていた」と説明し、iPS研に残り教授として活動を続ける旨を表した。後任については、「自らも臨床試験を先導されている髙橋先生は、新所長として最適の研究者」と述べた。

新所長の髙橋氏はiPS研設立当初からのメンバーで、神経再生・脳神経外科学を専門とする。iPS細胞研究の最前線を担う研究者であり、18年には自身の研究成果を用いて、京大医学部附属病院にてiPS細胞を用いたパーキンソン病治療の医師主導治験が開始された。髙橋氏は「研究所を立ち上げ軌道に乗せてこられた山中所長に心から敬意を表す。未来の医療や生命科学に貢献できるよう教職員・学生とともに研究・医療応用を推進していく」と述べている。

新所長のもと研究を続けるiPS研だが、財源確保の面で前途洋々とは言い切れない。12年度に政府が打ち立てた、iPS細胞を含む再生医療研究への10年で約1100億円の支援が22年度末に終わる。山中氏はかねてより「医療応用を実現するには20から30年かかる」と述べている。また、治験を進めていくこれからの臨床研究には今まで以上に予算が必要となる。iPS研所長を退く一方、産業界への「橋渡し」を目的に設立したiPS細胞研究財団の理事長を続ける山中氏は、23年度以降もこれまでと同様に科研費やその他の競争的資金に応募し研究費の獲得を行う予定だという。

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