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家族性アルツハイマー 進行抑制 治療薬の有効性を確認

2022.07.16

京大iPS細胞研究所(CiRA)の井上治久教授と京大医学部附属病院先端医療研究開発機構(iACT)の坂野晴彦准教授らの研究グループは6月30日、家族性アルツハイマー病患者にブロモクリプチンが有効だとする治験の結果を発表した。新たな副作用が認められなかったほか、病状進行を抑制する効果が見られたという。

アルツハイマー病は認知機能の障害や、妄想・徘徊といった行動・心理面の症状が起こる疾病で、認知症の原因として知られている。治療薬は存在するものの根本的な治療には至っていない。このうち、家族性アルツハイマー病は親から受け継いだ遺伝子の異常によるもので、プレセニリン1の変異が原因の半数以上を占めている。

病気の患者の細胞からiPS細胞を作製することで、患者への負担を減らしながら、治療薬になりうる化合物の効用を短期間で大量に調べることができる。2017年、この手法により、パーキンソン病治療薬であるブロモクリプチンが、家族性アルツハイマー病の原因物質「アミロイドベータ」を低減させる働きがあることが判明した。アルツハイマー病の治療薬としての活用に向け、2020年から治験を始め、有効性や安全性などを評価した。

治験では、プレセニリン1遺伝子変異アルツハイマー病患者8名にブロモクリプチンもしくは偽薬を投与した。結果、副作用については嘔吐、めまいなど既に報告されていたものに限られ、家族性アルツハイマー病特有のものは現れなかった。有効性については、認知機能と行動・心理症状を2つの指標で評価した。研究グループは、治験に参加した患者数が限定的で検討が必要としながらも、実際にブロモクリプチンを投与した患者は偽薬を投与した患者に比べ、両方の指標で病状進行が抑制されたと発表した。

今後、本治験の結果を踏まえ、実用化に向けて規制当局と協議を進めるという。

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