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iPS知財管理会社設立 創薬・医療で実用化目指す

2008.07.16

京都大学は3日、iPS細胞に関する知的財産を管理・活用する事業実施会社「iPSアカデミアジャパン株式会社」(京都市上京区)を設立した、と発表した。京大に限らず、他大学・研究機関のiPS細胞に関する知財も一括管理し、企業や研究者に特許発明の実施権を提供することを通して「オールジャパン体制」での社会還元を実現したいとしている。

京大は今年5月に事業準備会社である「有限責任中間法人iPSホールディングス」を設立、その全額出資を受ける形で知財管理会社が設立された。資本金は1億円で、今後大和証券グループ本社、三井住友銀行、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズの3社から合計で10億円強の出資が予定されている。代表取締役には吉田修・京大名誉教授(前奈良県立医科大学学長)が就任した。

iPS細胞に関する特許発明の実施権(※)を集め、それを営利機関には有償で、非営利機関には無償で提供し、創薬や再生医療での実用化を目指す。「非独占」のライセンス事業を原則とするが、いち早い実用化が期待できそうな機関を優先して対応していくとしている。

これまでも試験的に行っていた山中伸弥教授らが開発したiPS細胞関連技術の提供を継続しつつ、京大が出願したiPS細胞関連特許の権利化支援業務を行っていく。吉田社長は「将来的には京大以外の研究機関が持つ特許の実施権もここに集め、関連特許を一元管理する『パテントプール』形成の必要性を感じている」と話しており、東京大学や理化学研究所などの国内研究拠点との交渉を進めているという。特許自体は出願した大学や研究機関が保持するので、実施権を設定した場合には知財管理会社は実施料という形で対価を支払う。

6月25日付で設立され、現在は本格的な事業開始のためのスタッフを集めている段階とのこと。他大学・研究機関からの社員参加も考えており、世界に向けて開かれた透明性の高い会社にしていきたいとしている。

※正確には「通常実施権」。特許権者による許諾を受けて特許発明を実施する権利のこと。特許庁への登録は必要なく、特許権者は重ねて実施権を設定できる。他者に通常実施権を設定しても特許権者の実施権は失われない。iPSアカデミアジャパンは京大がもつ実施権や他機関から設定を受けた実施権を企業や研究者にライセンスする業務を行う。また、特許権者が互いにライセンスしあう「クロスライセンス」などによっても、「有用で魅力ある知的財産」を形成していきたいとしている。

《本紙に写真掲載》

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