文化

時代の狭間で散った魂 「幕末維新動乱 ~安政の大獄から鳥羽伏見の戦いまで~」

2022.08.01

5月18日から霊山歴史館で企画展「幕末京都動乱~安政の大獄から鳥羽伏見の戦いまで~」が開かれている。江戸時代末期、ペリーの来航並びに幕府の求心力の低下により日本は政治的変革の時を迎えていた。この企画展では、幕末の京都で起こった動乱を軸に約35点の歴史資料を展示し、時代の変わり目を生きた志士の姿に光を当てている。

ishin1.png

【展示は、一階の企画展と二階の常設展に分かれる(霊山歴史館提供)】



展示は時代順に十個の事件を取り上げており、関連する人物の人柄がうかがえる多彩な資料が並ぶ。例えば「安政の大獄」にちなんで、井伊直弼が詠んだ和歌が展示されている。直弼は尊王攘夷派の志士を弾圧した人として知られているが、和歌や芸事に熱中する面もあったという。また、「薩⾧同盟」では木戸孝允が薩⾧同盟の成立を述懐した和歌、「都々逸うめと桜」が展示されている。薩摩藩と⾧州藩が手を組むことで倒幕の大きな転換点となったとされている薩⾧同盟だが、元々薩摩藩と⾧州藩は血で血を洗う戦いを繰り広げており互いに相容れない存在だった。木戸は、同時に咲くはずのない梅と桜が一緒に咲くほど薩⾧同盟の成立は困難なことだったと振り返っている。

また、事件を題材にした錦絵を通して、動乱の様子を見て取ることもできる。「佐久間象山の暗殺」では、錦絵「元治夢物語」で象山が暗殺される場面が描かれている。赤絵と呼ばれる錦絵の一種で、赤色が非常に鮮やかなことが特徴だ。くっきりとした色合いで繊細な霞を表現する点に、作者の優れた技巧を見て取れる。「鳥羽伏見の戦い」に関しては、錦絵「毛理嶋山官軍大勝利之図」が展示されている。薩摩と⾧州の旗が掲げられ、新政府軍の兵士の姿がダイナミックに描かれている。この錦絵が写実的であるとは限らないが、人々は錦絵などを通じて当時の事件を知ったのだという。

ishin2.png

【錦絵 毛理嶋山官軍大勝利之図 (霊山歴史館提供)】



ishin3.png

【錦絵 元治夢物語(霊山歴史館提供)】



霊山歴史館は1970年(昭和45年)に開館した。戦前から霊山の地には志士の墓が建てられていたが、敗戦後GHQが日本政府に求めた政教分離によって国からの補助がなくなり、台風などの自然災害にも見舞われ荒廃してしまう。そこで地元の有志が松下幸之助(現パナソニックホールディングス創業者)のもとに相談に行き、松下幸之助が関西の財界に呼びかけ墓地の整理を行った後、幕末の志士の生き様を後世に伝えよう、と霊山の地に歴史館を建てた。霊山歴史館の背後には霊山墓地があり、今も彼らの魂が眠っている。二階の常設展では新選組に関連する資料、龍馬など倒幕に関わった志士たちに関する資料がそれぞれ展示されている。

企画展は9月11日まで。月曜休館。開館時間は午前10時から午後17時半(最終入館時間は17時)。観覧料は大人900円。高校生、大学生500円、小中学生300円。(李)

関連記事