文化

受け継がれてきた「祈り」の精神 「考古資料とマンガで見る呪術—魔界都市京都—」

2022.08.01

7月14日より、京都市考古資料館と京都国際マンガミュージアムで、「考古資料とマンガで見る呪術—魔界都市京都—」展が開催されている。ここでいう呪術とは、超自然的な力を頼り、願いを叶えるために祈る行為のことだ。本展覧会では、市内で出土した呪物の実物を資料館で、呪術に関連するマンガ作品をマンガミュージアムで展示し、考古資料とマンガというふたつの視点から、太古より現代にまで息づく呪術に光を当てる。

呪術における願いは大きくふたつ、災厄を避けるものと他人への恨みを晴らすものに区分できるという。例えば資料館で展示されている遺物のうち、市の指定文化財である「墨書人面土器」は長岡京の川跡から出土した資料で、椀状の土器に個性豊かな顏が描かれている。疫病から逃れるため、息を吹き込んでケガレを移し、川に流したものだという。また、平安京の井戸の跡から出土した人形代(ひとかたしろ)は、木製の人形に墨で名前が書かれ、さらに腹の部分が削られていることから、特定の個人を呪うため使用されたと考えられる。展示資料は陰陽道や密教といった関連する宗教によって分類され、古代の生活に多種多様な呪術が根付いていた様子がうかがえる。

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【それぞれ異なる面持ちの「墨書人面土器」】



マンガミュージアムでは、負の感情が具現化した「呪霊」との戦いを描く『呪術廻戦』を始め、計20シリーズのマンガ作品が集められている。その多彩さを強調するのは、今回の展示を担当した学芸員の應矢泰紀氏だ。実在した陰陽師・安倍晴明を主人公とした作品は数多く存在するが、『陰陽師』では平安京で起こる怪異を彼が鮮やかに解決していく一方で、『晴明さんはがんばらない』ではタイムスリップした女子大生が「安倍晴明」を名乗り、当時の偉人たちと日常を過ごすといったように、同じ題材でも全く異なるストーリーが展開される。呪術が物語のモチーフとして、現代にいかに強く定着しているかが見て取れる。

「呪術がいかに身近なものかわかってもらえたら」と應矢氏は語る。現代でも寺社に参拝したりおみくじを楽しんだりするように、超自然的な力を頼る感覚は決して過去のものではない。だからこそ呪術マンガがひとつのジャンルとして成立しているのだろう。過去の人々の祈りを背負った呪物と、マンガ作品に合わせて触れることで、呪術の時代を超えた普遍性を実感できるはずだ。資料館は11月20日まで開催され、入館料は無料。マンガミュージアムは9月5日までの展示で、大学生を含めた大人の入館料が900円である。(凡)

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【パネル展示の下に多様な作品が並ぶマンガミュージアム】

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