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小笠原固有種の起源を解明 生態系保全への活用期待

2022.04.16

野田博士・理学研究科研究員、髙山浩司・同研究科准教授らの研究グループは3月31日、小笠原諸島に生育する植物であるキョウチクトウ科ヤロード属の固有種2種が、それぞれ異なる祖先種から独立に種分化したことを明らかにしたと発表した。今後、森林を構成する植物種の来歴や進化の過程を解明していくことで、小笠原諸島独自の生態系の形成過程を理解し、保全に活かすことが期待される。

小笠原諸島が大きな陸地から離れており、固有植物の調査で地理的条件からは起源地や祖先種を絞り込むことが難しいという課題があった。この課題を克服するため、周辺地域を含めた近縁種の網羅的なサンプリングを京都大学、琉球大学、東京都立大学、グアム大学の研究者が協力して行った。分子系統分析の結果、小笠原諸島に生育するヤロード属の固有種2種は、琉球列島の種とマリアナ諸島の種とをそれぞれ祖先とすることが証明されたという。小笠原諸島のような海洋島では、単一の祖先種が複数の種に分化する適応放散という現象が知られている。しかし今回の結果は、ヤロード属の固有種2種は小笠原諸島にたどり着いた異なる祖先種から独立に進化したことを強く支持している。周辺地域を含めた近縁種との網羅的な比較解析によって、海洋島の固有種の複雑な進化的起源の一端が紐解かれた。

高山准教授は報道発表の中で「現地調査を経て、小笠原のヤロード属2種は異なる起源を持つことを半ば確信した。今後も周辺地域の研究者との連携を高めることで、小笠原諸島の固有種の起源を網羅的に解明していきたい」とコメントした。この研究成果は、3月28日に国際誌「Molecular Phylogeneticsand Evolution」のオンライン版に掲載された。

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