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眼の光センサーを新分子ツールに 理学研 視覚ロドプシンを改変

2022.03.16

酒井佳寿美・理学研究科研究員、山下高廣・同研究科講師らの研究グループは2月25日、cAMPの濃度を光により短時間で変化させる分子ツールを開発したとする研究成果を発表した。眼の光センサータンパク質である「視覚ロドプシン」を改変した。cAMPは細胞のホルモン分泌において重要な機能を担う物質であるため、このツールを用いることで細胞内のcAMP濃度を人為的に変化させ、細胞の機能の研究がより容易になる可能性があるという。

眼の視細胞にある視覚ロドプシンは、光で細胞内のcAMP濃度変化を誘導できることが明らかになっていた。他の細胞に視覚ロドプシンを発現させると、光刺激によって意図的にcAMP濃度を下げられるのだという。しかし、視覚ロドプシンは光により活性化した後、活性化状態がしばらく維持される。そのため、細胞内でcAMP濃度の減少が長く続き、短時間で繰り返し応答を誘導することが難しいという問題があった。

研究グループは、この問題の解決のため、別の光センサータンパク質である「Оpn5L1」に着目したという。Оpn5L1は、光刺激で活性化した後、自発的に元に戻り不活性化状態になる特性を持ち、研究グループはこの特性をもたらす上で重要とされるアミノ酸を特定していた。そこで、視覚ロドプシンにこのアミノ酸残基を導入したところ、同様の特性を持たせることに成功したという。また、別の変異を導入したところ、自発的に不活性化する時間を変えられることが判明した。さらに、今回開発された「改変型視覚ロドプシン」を実際に他の細胞に導入したところ、cAMP濃度を光で一過的に減少させた後、短時間で元の濃度に戻ることが確かめられたという。

山下講師は報道発表の中で、ロドプシンが百年前から存在を報告されていることと、光を使って細胞を操作する「オプトジェネティクス」が直近の十年で急速に発展していることの二点を踏まえ、「連綿と続く基礎研究の重要性を再認識する」とコメントしている。この研究成果は、国際学術誌「eLife」にオンライン掲載された。