「春はあけぼの」の季節観に共鳴 企画展「絵でみる百人一首と枕草子」(2022.02.16)

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渡月橋の架かる大堰川(おおいがわ)のほとり、小倉山が見下ろす場所にある嵯峨嵐山文華館。藤原定家が小倉にある山荘で選んだゆかりから、小倉百人一首に関する常設展を展示している。1月29日から開催されている企画展「絵でみる百人一首と枕草子」では、百人一首に関する作品と、枕草子の文章を彷彿させる日本画の数々が集められている。

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【有名な画家の作品がずらりと並ぶ】

2階の畳ギャラリーに入って最初に並べられているのは、季節の章に合わせて選ばれた絵画だ。横山大観や小堀鞆音など、名高い画家たちが描く季節の絵は、枕草子を題材に描かれた絵画ではないにも関わらず文章とよく合っている。文章と絵画で表現方法は違えど、清少納言と画家の心眼が各々で捉えた季節観が、この展示室で調和している。

春はあけぼの。やうやう白くなりゆくやまぎは……。多くの日本人が口ずさむことができるこの一節。千年以上前に書かれた季節観は現代にも通じる。のみならず、日本人の季節観の根底には枕草子があるのではないかと思われるほどに、展示された日本画が示す春夏秋冬はどれも胸にすとんと落ちる。花が咲き始める枝の先で鳥がさえずる光景を実際に見たことがなくても、なるほどこれが春かと合点がいくことからもわかるように、この展示室に並べられている「季節」は個々の事象を超えた、もっと概念的なものなのではないかと思われる。季節に関する文章と一緒に並べられている日本画はどれもどこか幻想的で、具体的などこかの風景を切り取ったというより、「春」「秋」といった概念を紙の上に出現させたような絵画だ。

他方、祭事や衣装など、平安時代の風俗に関する記述に対する絵画は表現の細かさ、正確さが目立つ。展示されている絵画の1つ、「かづけもの」の絵は、くっきりとした線で貴公子の姿を描き出していて、しなやかな布の質感、襟から覗く重ね着の色合いの美しさは、振り返る男の艶美な表情を際立たせ、まさに「をかし」だ。平安時代の生活を読み手の眼前に浮かび上がらせる文章は、みずみずしい季節観に並んで枕草子の魅力のひとつである。両方の魅力が、展示されている絵画の特徴にきちんと反映されている。

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【藤原周頼を思わせる貴公子の絵】

嵯峨嵐山文華館の2階からは、小倉山と大堰川が見え、四季折々の嵐山の風景を俯瞰することができる。ギャラリーの中の日本画を十分に堪能したあと、展示室を出てその風景を見やると、それすら1つの作品であるかのようにも感じられる。渡月橋から少し足をのばして、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

企画展は4月9日まで。(滝)

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