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植物代謝経路、微生物に 生命科研グループ

2008.06.04

生命科学研究科の佐藤文彦教授らの研究グループは、植物の物質代謝系を微生物内に再構築し、部分的に改変することで、薬剤生成に有用なレチクリンを合成生物学的に生産することに成功した。この研究成果は5月19日発行の『米国科学アカデミー紀要』オンライン版に掲載された。

植物の合成する低分子化合物は、食材や工業原料として利用されるほか、医薬品として使われるものがある。しかしながら薬用植物から目的の化合物を取り出すには、植物を育てるのに長い年月がかかるという時間的な問題、また温度などの栽培条件を整える必要があるという金銭的な問題があった。

今回、佐藤教授らの研究グループは、植物が細胞内でアルカロイドを生成する代謝経路を大腸菌に組み込むことに成功、また経路を改変することで、レチクリンを簡単な基質であるドーパミンから生合成することに成功した。レチクリンからは抗菌・抗炎症剤であるベルベリンなどの有用イソキノリンアルカロイドが合成される。さらに研究グループは酵素を組み合わせることにより、動脈硬化防止に効果のあるマグノフロリンなどの物質もレチクリンを介して合成することに成功している。

これらの成功は、有用イソキノリンアルカロイドの工業的生産の可能性を示唆するものであり、薬剤をより安価に提供する技術の進歩につながると考えられる。また今回発見された手法は、生理活性物質のスクリーニング等に用いられる化合物のライブラリー(ケミカルライブラリー)において、合成の難しい天然物由来のライブラリーを作成する基盤になると期待されている。

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