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遺骨問題 「真相究明、返還を」 国内外の研究者ら 要望書

2020.11.16

京大と同志社大学の教員有志は10月19日、京大が所蔵する遺骨を巡り、遺骨の由来や収集、保管に関しての真相究明と、不当に収集された遺骨の研究利用の禁止、返還に向けた協議などを求める要望書を京大に提出した。京大は、「総合博物館が所蔵する人類学資料については、順次調査を進めているところであり、現時点で回答できることはない」と答え、懇談の求めにも応じなかった。呼びかけ人の教員、板垣竜太氏、駒込武氏、藤原辰史氏、松田素二氏は、10月29日に会見を開き、京大の一連の対応を批判した。

京大は懇談に応じず

京大総合博物館は、1920年代に京都帝国大学医学部の清野謙次・教授らが収集したアイヌ民族の遺骨を保管しているほか、同時期に琉球から収集された遺骨26体や、奄美から収集された遺骨を保管している。また、当時植民地であった台湾や朝鮮からも遺骨が集められた記録が残っており、現在も京大に保管されている可能性が高いという。収集は、植民地支配を背景にして、拝む人のいる墳墓の発掘など、住民の同意を得ない形で行われたことが指摘されており、遺骨の返還を求める声が上がっているが、京大は返還に応じていない。一方、昨年7月には、日本人類学会の篠田謙一会長が京大総長に対して、遺骨を「国民共有の文化財」だとし、今後も研究資料として利用できるよう京大に対応を求める要望書を出している。

今回の要望書では、琉球遺骨の返還請求訴訟に触れながら、被告・京都大学の「警察の許可があった」との主張は、「むしろ遺族や住民の合意がないまま、不均衡な権力関係のもとで収集が進められていたことを示唆するもの」と述べた。また、遺骨の研究利用を求める意見に対しては、「遺骨の価値は一部の専門家だけが独占的に決めうるものではない」と反論し、「人間の尊厳を傷つける研究を通じて得られるような学術的価値の存在を認めることができない」と述べた。その上で、他国の事例を参照しつつ、▼遺骨の由来、収集、保管等に関しての真相究明の推進、▼不当に収集された遺骨や、問題を払拭しきれない遺骨の研究利用を禁じ、謝罪と原状回復のための取り組みを進めること、▼死者あるいは遺骨由来地に深くゆかりがある人々から返還等の要請があった場合は、真摯に応じ、あり方を協議すること、▼非倫理的に収集された遺骨の調査や返還を進める方針の策定を国に要請すること、を求めた。

要望書は、「人骨問題を考える連続学習会@京都大学」を昨年5月から主催してきた教員ら7名の教員が呼びかけ人となり、国内外の研究者172名と21団体・個人160名から賛同の署名があった。10月29日の記者会見では、京大総務部総務課から28日、「本学総合博物館が所蔵する人類学資料については、順次調査を進めているところであり、現時点で回答できることはない」との回答が書面で送られきたことが明らかにされた。京大の返答について板垣氏は、要望書は京大の基本姿勢を問うもので特定の人骨についての情報開示を求めたわけではないこと、人骨の保管先は総合博物館だけでないことを指摘し、「要望書の内容を履き違えたものだ」と批判した。

呼びかけ人は、要望書の提出に際して、総長・前総長や担当者との懇談の機会を求めたが、これも応じられないとの返答が11月10日にあったという。

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