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京大 家計急変の学生に12万円 大学独自の給付金を創設

2020.06.01

京大は5月20日、新型コロナウイルスの影響で家計が急変した学生に対し、一人当たり12万円を給付すると発表した。これに加えて授業料免除の拡大などを盛り込んだ「緊急学生支援プラン」を実施するという。5月19日には政府がアルバイト収入の激減した学生を対象に最大20万円となる給付金を創設した。これらの申請手続きの詳細について京大は、追って発表するとしている。

京大「緊急学生支援プラン」実施

「緊急学生支援プラン」の中で京大は、独自の給付金を創設した。学資負担者などの収入が減少した学生を対象に12万円を支給する。加えて京大は授業料免除を拡大すると発表した。現行の減免制度で半額免除となる学生は全額免除にし、経済基準を満たしているが減額されなかった学生は半額免除にする方向で調整していくという。授業料を巡って政府は、減免を実施する大学などへの助成金として、153億円を第2次補正予算案に組み込み、27日に閣議決定した。このほか今回の支援策として京大は、オンライン授業を補助する学生アシスタントを募集し、雇用の機会を提供することで生活支援につなげると表明している。

京大はこれまで、感染拡大に伴う対応として授業料の納付期限や減免の受付期間を延長した。また、オンライン授業の実施に向け、インターネット環境が不十分な学生にモバイルルータを無償で貸与している。ルータの予定数に達したため5月19日で受付を締め切っており、約1500人に貸し出しているという。これらの対策分と合わせて、今回発表した「緊急学生支援プラン」の実施に向け、約10億円の学内予算を確保したという。

政府 減収学生に10万円支給へ

文部科学省は5月19日、新型コロナウイルスの影響でアルバイト収入が減少した学生に10万円を給付すると発表した。住民税非課税世帯の学生にはさらに10万円を上乗せする。文科省によると約43万人が対象で、大学院生も含まれる。第1次補正予算の予備費を活用することで迅速な給付開始を目指すという。

政府は19日、「緊急給付型奨学金」の実施を閣議決定した。アルバイト収入で学費を賄っている学生の支援を目的とする。申請の要件として文科省は、▼学費や生活費に占めるアルバイト収入の割合が高いこと▼今年1月以降アルバイト収入が大幅に減少したこと▼原則として自宅外で生活していること▼民間奨学金を含む既存の支援制度を利用しているか、利用予定であること▼仕送り額が授業料を含めて年150万円以下であることなどを目安としている。ただし、これらの基準をふまえたうえで、最終的には各大学が個々の学生の事情を考慮して判断することとし、迅速かつ柔軟な決定を促している。

なお、留学生にはこれらの要件に加えて出席率や成績などの基準も設けている。この追加要件について文科省は、日本学生支援機構が実施している既存の留学生向け奨学金にならって設定したと説明している。これも目安であり、給付の可否は大学の判断に委ねられる。

今後の見通しについて萩生田光一・文部科学大臣は19日の会見で「速やかに行き渡るように対応する」と述べた。収入などの情報は学生の自己申告をもとに判断し、提出書類の枚数を絞ることで手続きの簡略化を図る。また、迅速な給付開始に向け、第2次補正予算の成立を待たずに着手し、すでに成立している第1次予算の予備費を活用することを決定した。総額で530億円を計上するという。各大学が申請の可否を判断し、日本学生支援機構を通じて国から現金を支給する。文科省は5月19日以降に申請を受け付けるよう各大学に通知しており、京大は手続きの詳細を追って発表するとしている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて文科省は、4月から始めた新制度に基づく給付金や授業料免除の枠を拡大するなどの対応をとったが、新制度は学部学生のみを対象としており、支援を受けられない学生が生じた。今回の給付金は、大学院生や高校卒業後3年以上経過して入学した学生など、新制度の対象外となる学生にも支給されるほか、世帯の収入要件はなく、約43万人が対象となる。一方で、対象者の割合としては全国の学生の約1割にとどまっており、今般の状況を受けて下宿から自宅通いに切り替えた学生など、国の示す目安に当てはまらない学生も一定数生じる。大学の判断でどの程度申請が認められるかは不透明で、学生団体などから一律の給付を求める声も出ている。

全国で緊急事態宣言 解除

日本政府は5月25日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を全都道府県で解除した。5月14日に39県、5月21日に京都・大阪・兵庫について解除を発表しており、首都圏と北海道では継続していた。今後は、3週間ごとを目安に状況を判断し、外出やイベント開催の自粛要請を段階的に緩和していくという。

新型コロナウイルスは風邪の原因となるウイルスの一種で、発熱やのどの痛み、強いだるさなどの症状を引き起こす。重症化すると肺炎となる。感染から発症までの潜伏期間が長いうえに無症状者からも感染する特性があり、治療法の確立が追い付いていないことも相まって世界中で感染が広がった。世界保健機関によると全世界での死者数は約36万人に上っている。日本国内では、厚生労働省によると5月31日時点で感染者は1万6851人で、うち1万4459人がすでに療養を終えており、死者は891人となっている。

6月1日10時30分配信

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