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吉田寮現棟 占有移転禁止に 京都地裁が仮処分決定

2019.02.16

京大当局が吉田寮生に寮からの退去を求めている問題で、京都地裁は、1月17日、吉田寮現棟に占有移転禁止の仮処分を執行した。これにより、建物の保管権が京都地裁執行官に移され、処分日時点での現棟居住者が占有権を第三者へ移譲できなくなる。京大によると、昨年12月20日に京大当局が申し立てを行ったという。執行後、川添信介学生担当理事が会見を行い、現棟の明け渡し訴訟を提起する可能性を「排除していない」と説明した。仮処分を受け、吉田寮自治会は1月19日付で声明を発表し、「認められない」と抗議した。

1月17日午前10時頃、京都地裁の執行官7名が、立会証人や執行補助者らとともに吉田寮に立ち入り、現棟及び食堂に公示書を掲示し、仮処分が完了した。京大によると、川添理事や山極総長、他の理事らによる協議を経て京都地裁に申し立てを行ったところ、今年1月8日に仮処分決定の通知を受けたという。そして、1月11日に仮処分の執行を申し立て、実施に至った。なお、新棟については、当局が申し立ての対象に含めなかったため、仮処分が執行されていない。

占有移転禁止の仮処分は、一般的に、建物の明け渡し訴訟を行うことを前提に執行される。債務者となる住人を固定することで、明け渡し訴訟における被告人を特定するとともに、強制執行が決まった場合に、第三者の居住によりその執行が妨げられないようにする効力を持つ。吉田寮については、今回の仮処分により、現棟に居住する寮生が特定される。加えて、今後、新規入寮を希望する者には、占有権の保有が認められず、明け渡し訴訟が提起された場合、その判決の効力が及ぶことになる。

会見で川添理事は、明け渡しの訴訟について、前提にはしていないと説明したものの、提起する可能性を認め、「吉田寮自治会がどういう動きをするかを、期待を持って見守っていく」とした。申し立てを行った理由について京大は、1月17日付で発表した「吉田寮現棟に係る占有移転禁止の仮処分の執行について」の中で、退舎期限としていた昨年9月末以降も寮生が現棟に居住している状況を「もはや放置できず、一刻の猶予も許されないものと考えたため」と説明した。吉田寮側には、申し立てや仮処分の執行を事前に伝えていなかったという。

仮処分を受け、1月19日、吉田寮自治会は、「京大当局による『占有移転禁止の仮処分』申し立てに対する抗議声明」を発表した。その中で、「訴訟という措置をちらつかせながら、自らの方針に従わせようとするのはハラスメントである」と大学側の対応を批判し、仮処分の取り下げを要求した。現棟の老朽化対策について、「話し合いによって解決を急ぐべきであり、法的措置に訴えることは根本的な問題解決にはならない」と指摘した。続けて、「京大当局による脅迫的な退去強要には応じない」と表明し、話し合いによる合意形成を引き続き大学側に求めていく意向を示した。

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